プロゴルファー祈子の元になったと言われる「不良少女とよばれて」
◆内容
プロゴルファー祈子・
全話の要約です。
テレビでは1987年10月21日から1988年4月20日まで放映(昭和62年10月~昭和63年4月)
◆状況
DVDが出ておらず、Netflix、Huluやアマゾンプライムなどの見放題プラン、光TVのリストにも存在しないので2022年以降に見ることは著しく困難。
たまに違法アップロードもあるが、短期間で消滅することが通常。
不良少女と呼ばれてと似ているから版権の関係で駄目という噂もあるが、無関係だと判断。
ゴルフクラブで人を殴ったり、殺人の凶器にしている事が理由。恐らく、ゴルフ協会から強いクレームが入ったのだろう。
当ページ筆者は20年以上前の再放送時になんとかビデオに収めることに成功。粗筋を解説したい。
◆各話リスト
連番 | サブタイトル |
---|---|
1 | 乳房に傷を持つ少女 |
2 | ああ 私の敵は兄?! |
3 | さようなら!貴男 |
4 | 破られた婚約 |
5 | さらば不良少女 |
6 | 少年院が待ってるぜ |
7 | 涙の引退式 |
8 | バンカー蟻地獄 |
9 | 婚約者の復讐 |
10 | 血鎖の秘密 |
11 | 敵?謎の美少女 |
12 | 鏡の国から来た娘 |
13 | 決闘!富士の裾野 |
14 | 女4人地獄の戦場 |
15 | 恋捨て記念日 |
16 | 明日なき闘い |
17 | 命賭けた闇ゴルフ |
18 | 友よ安らかに眠れ |
19 | 継母の陰謀 |
20 | 夢か?峡谷の特訓 |
21 | 友情そして勝利 |
22 | 勝て!少女戦士 |
23 | 傷だらけの栄光 |
■登場人物■
◆神島祈子(かみしま れいこ)(演:安永亜衣)
祈る子と書いて「れいこ」。これは父・友平が出生届を提出する際に「礼子」と書くべきところを「祈子」と書き間違えたため。父が無実の罪を着せられ陥れられたことで、謂れなき差別を受けて育った。そのため非行の世界へと足を踏み入れ、暴走族・北斗七星会の会長となり、5番アイアンを使って敵対グループのメンバーを殴る・火の点いたゴルフボールを打ち込むなど大暴れし、『5番アイアンのお祈』として名を馳せた。信也の真剣な愛情によって目覚め、父の魂を受け継ぎプロゴルファーを目指す。父の無実を信じており、信也とともに謎に迫る。かつて信也が打ったゴルフボールが胸にあたり、今も胸に痣となって残っている。
◆野上信也(のがみ しんや)(演:風見慎吾)
祈子・徹の幼なじみ。誠実な性格で、賢三に逆らえない父と母から反対に遭いつつも、祈子のために体を張って純愛を貫く。
◆神島徹(かみしま とおる)(演:沢向要士)
祈子の兄。信也が打ったゴルフボールが祈子の胸に当たった際、怒り狂って信也を叩きのめし、そのまま家出。祈子同様非行に走り、北斗七星会と勢力を2分する暴走族・ブラックエンジェル会長を経て、野沢の手下になっていたが、根は純粋な青年。祈子に対し妹以上の感情を持っていたが、実は野上敬太郎の隠し子であり、信也の腹違いの弟であることがのちに明らかとなり、信也とは恋敵になる。
◆神島保子(かみしま やすこ)(演:音無美紀子)
女手ひとつで祈子と徹を育てていたが、非行に走った子供達に胸を痛めている。横浜市内で大衆食堂「あすか」を経営している。
◆神島友平(ゆうへい)(演:岡本富士太)
祈子・徹の父で以前は有名なプロゴルファーだった。ある人物の企みにより殺人の罪を着せられたまま遺体で発見される。
◆野上敬太郎(けいたろう)(演:中条静夫)
信也の父で徹の実父。祈子を「野上家の疫病神」呼ばわりし、後に祈子に「信也と別れて野上家を救ってくれ」と頼む。
◆野上静子(しずこ)(演:久我美子)
信也の母。息子を誑かした犯罪者の娘・祈子や、自身の夫の子で直接の血縁が無い徹に対してつらく当たるなど、世間体ばかり気にする。
◆丸元賢三(まるもと けんぞう)(演:長門裕之)
利一郎亡き後、丸元物産社長に納まる。
◆丸元律子(りつこ)(演:岩本多代)
利一郎の実妹で賢三の妻。祈子を目の仇にする。
◆丸元亜矢子(あやこ)(演:生田智子)
賢三・律子夫婦の一人娘。信也の婚約者だったが、婚約解消を信也から告げられ、恋敵として祈子を憎む。祈子がプロゴルファーを目指し養成所入りした事を知り、ゴルフで祈子を打ち負かそうと、両親の反対を押し切り同じ養成所へ入所する。
◆丸元利一郎(りいちろう)(演:佐原健二)
賢三の義兄で、生前は丸元物産の会長を務めていた。ゴルフのプレイ中に友平に撲殺されたとされているが……。
◆高倉道夫(たかくら みちお)(演:国広富之)
プロゴルファー。友平と賢三の秘密を握っていると目され、祈子から執拗に追われるが、祈子をゴルファーとして鍛え上げ、祈子から先生と仰がれるようになる。
◆野沢剣二(のざわ けんじ)(演:萩原流行)
祈子の行くところに現れる暴力団・華粋会(かせいかい)の幹部。賢三の命令で非道な行いをする。孤児であったが、賢三に妹とともに援助を受けた恩を返すために働いている。
◆野沢冬子(ふゆこ)(演:松井きみ江 現・松井紀美江)
剣二の妹で丸元家の家政婦。律子の命令で祈子を抹殺しようと火を放つが、逆に返り討ちに遭い焼死する。
◆大崎冴子(おおさき さえこ)(演:大沢逸美)
徹の恋人でレディースブラック会長。祈子を少年院送りにすべく鑑別所に入所したが、野沢に唆されて祈子を奪還しにきた徹と鑑別所を脱走後、レディースブラックを追放される。徹が祈子のことを好きだと知り、目の仇にしている祈子の前に現れるが、足を洗った祈子に勧められる形でプロゴルファーを目指す。高校時代はソフトボール部でピッチャーだった。
◆時田真介(ときた しんすけ)(演:石橋正次)
元プロゴルファー。祈子が父の秘密を探るために接触したが、何者かに口封じに殺される。
◆秋葉清(あきば きよし)(演:織田裕二)
北斗七星会副会長。序盤のみ登場。
◆新巻鉄男(あらまき てつお)(演:斉藤隆治)
北斗七星会のメンバー。
◆室田花子(むろた はなこ)(演:松居直美)
通称・おハナ。祈子の親友で北斗七星会の幹部。かつて当たり屋の常習で少年院に収容されていた頃に鏡子に救われ恩義を感じており、祈子を付け狙う鏡子との間で板ばさみになる。しかし鏡子が信也にまで危害を加え、祈子との対決は避けられないと知り鏡子をナイフで殺害しようとして、もみ合ううちに誤って崖から転落。二人の和解を訴えながら息絶える。
順子(じゅんこ)(演:白島靖代)
祈子の親友で北斗七星会の幹部。
◆大木優子(おおき ゆうこ)(演:中村晃子)
野沢行きつけのスナックのママで、徹の実母。若い頃は赤坂で芸者をしていた。
◆司鏡子(つかさ きょうこ)(演:土家里織)
『5番アイアンのお祈』によく似た格好をし、胸に祈子のものとそっくりの傷跡を持つ謎の少女。実は利一郎の娘であり、胸の傷は父親を狙って時田真介が打ったゴルフボールを身を挺して受けて出来たもの。父親を殺された恨みを容疑者の娘である祈子に抱く。司という姓は本名ではなく実母の旧姓で、素性を隠して祈子や信也に接近する。中学の時に、賢三と共謀して父の財産を奪おうとしていた継母をベランダから突き落として殺害した過去があり、収監された少年院で同室だった花子を救うため看守を刺し、少年刑務所送りになっていた。
◆森戸大二郎(もりと だいじろう)(演:下川辰平)
鑑別所所長。
◆黒木(くろき)(演:綿引勝彦)
御殿場にある星雲女子プロゴルファー養成所の主任コーチ。友平からアドバイスを受け、17回目の挑戦でプロテストに合格した過去がある。
《出演者メモ》
●不良少女とよばれてと共通で目立っているのは、やはり高倉役の国広富之か。他には、鑑別所にも共通キャラはいたが端役となる。逆に言えば、出演者はほとんどかぶっていない。
●高倉役の国広富之は、不良少女とよばれてでは味方役だったので、祈子の高倉が本当はいい人だという先入観が出てしまいがち。
●大沢逸美はヤヌスの鏡にも女ヘッドとして出ていた。一方では、お笑いマンガ道場に出て、おちゃめな絵を描いていた。
●時田役の石橋正次はヤヌスの鏡では硬派の教師だったので、イメージが違う。
●賢三の役者・長門裕之は当時53歳で、2022年現在の53歳とは違い、老けてるように感じる。チビだが、二枚目役者だったらしい。祈子視聴時には悪役が主体の三枚目役者かと思っていた。
以下、閉鎖サイトからの引用。別の人による粗筋と感想・解説で、より一層の物語把握を。なお、別の人の文章は参考にせずに、ページ筆者は上に記した文章を書いている。
◆第1話「乳房に傷を持つ少女」
ストーリー
「神よ・・・!父の祈りの中、九死に一生を得てこの世に生を受けた祈子。祈る子と書いて祈子。今、祈子は神に何を祈るか・・・」
静かなゴルフコース。会社社長・野上敬太郎(中条静夫)と息子の信也(風見慎吾)、同じく会社社長の丸元賢三(長門裕之)と娘の亜矢子(生田智子)がプレーを楽しんでいる。あるホールで、信也がショットを放つと、突然、謎の少女がコースに飛び出し、手にした5番アイアンでそのボールを叩き落した。そして自らそのボールを、隣のコースでプレーしていた若い男の前に打ち込んだのである。少女はその男に向かって、彼に弄ばれた挙句自殺した或る娘のことを詰問する。「世間はお前たちの味方をするだろうが、私のこの傷が黙っちゃいないんだよ!」と少女は自分の乳房の上に残る大きな傷跡を見せた。5番アイアンを持つその少女は男を滅多打ちにし腕をへし折ってしまう。
胸に傷跡を持つこの少女、信也には見覚えがあった。「祈りっ子!」声をかける信也だが、少女は何も答えず、バイクに乗って現れた仲間たちと共に嵐のように去って行った。「・・・祈ちゃんだ。間違いない!」
――神島祈子、18才。彼女は神奈川県最大の非行グループ・北斗七星会の会長“アイアンお祈”として恐れられていた。だが、生まれついての不良少女がこの世にいるはずがない。話は3年前に遡る。
3年前、神島家は、野上敬太郎の所有する軽井沢の別荘で住み込みの管理人をしていた。その家族は、プロゴルファーとして各地を転戦する父・友平(岡本富士太)、母・保子(音無美紀子)、成績優秀な兄・徹(沢向要士)、そして妹の祈子。その頃の祈子は、プロゴルファーを夢見る明るい少女であり、野上信也を実の兄のように慕っていた。だが、ある日を境に、神島家を不幸のどん底に突き落とす大事件が立て続けに起こってしまう。
別荘でドライバーショットの練習をしていた信也がミスショットをし、祈子の左胸にボールを直撃させてしまった。倒れ込む祈子。それを見た徹は祈子が死んでしまったと短絡し、激昂して信也をゴルフクラブで殴りつけ重傷を負わせてしまう。幸い祈子の命に別状は無かったが、徹は大恩ある野上家の令息であり兄とも慕う信也を傷つけてしまったことで罪の意識に苛まれ、そのまま家を飛び出し行方をくらましてしまう。さらに追い討ちをかけるように、父・友平がゴルフ場でプレー中に殺人を犯したという知らせが入る。そして数日後、友平は塩沢湖で遺書を残して自殺してしまう。残された祈子と母・保子は、野上家から別荘を追い出されてしまった。
その時から、祈子は不良の道へと転落していったのである。
・・・・・・・・・・・・・・・
祈子と母・保子は人殺しの親子と罵られ、各地を転々とした挙句にようやく横浜に小さな家を借り、食堂を開いて生活をしていた。そこへ、3年ぶりに野上信也が訪ねて来た。保子はあの事件以来、野上家と連絡を絶っていたが、信也が探し当てたのである。ちょうど祈子も来ており、信也と祈子は改めて対面するが、祈子は信也と別の世界の人間になってしまっていた。祈子は仲間から、ライバルの暴走族・ブラックエンジェル出現の報を受けて飛び出してゆく。
埠頭に集結し一触即発状態となった祈子ら北斗七星会とブラックエンジェル。祈子は挨拶代わりに、地面に置いたゴルフボールにガソリンを撒いて火を付け、自慢の5番アイアンでフルスイング!命中した相手は火ダルマになって転げ回る。大乱闘が始まり、劣勢となったブラックエンジェルは退散。追おうとする北斗七星会。そこへ信也が駆けつけ、祈子に向かって、馬鹿な事はもうやめろ、と説得するが相手にされず、逆に袋叩きにされてしまう。「・・・祈ちゃん、プロゴルファーになるんだ、お父さんの夢を叶えるんだ!」。地面に突っ伏してしまった信也に構わず、祈子たちは引き上げる。だが、何故か祈子の胸の傷は再びうずくのだった。
その夜、祈子は父が自分に語りかける夢を見た。
「祈りっ子・・・お前は何をしているんだ。お前は私の祈りの中から生まれた女の子なんだぞ。お前にはゴルファーとしての天才的才能が秘められているんだ。祈りっ子、プロゴルファーになるんだ。全日本女子オープンに優勝して、お父さんの夢を叶えてくれ・・・!」
北斗七星会会長・神島祈子の心の奥底には、今もプロゴルファーへの夢が熱く秘められているのである。
ミニガイド(※次回予告。祈子が語ります)
神島祈子は、運命の荒波に身を委ねている少女です。あの優しかった父の殺人事件。それ以来、私は自分の素顔を見せない孤独な少女になりました。でも、そんな私をじっと見守ってくれる温かいまなざしに、私の心は揺れ動くのです。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
ご多分に漏れず?私も最初、「祈子」を「おりこ」と読んでいました(笑)。もちろん正しくは「れいこ」です。
ミニガイドでは、祈子(不良モード)のメーキャップ中の映像も流れます(貴重)。スタッフが「亜衣ちゃん、出番!」と声をかけると、「はーい!」と5番アイアンを手渡されて立ち上がる安永亜衣さん。
冒頭、ゴルフ場で男子学生を痛めつける祈子、蹴りがややお上品。
祈子のセリフに「おためごかしを言うんじゃないよ!」というのがありますが、「おためごかし」とは、「人の為にするように見せて実は自分の利益をはかること」。
祈子は不良になってからも時々は家に帰っていたのである。一方、兄の徹は消息不明のまま。
◆第2話「ああ 私の敵は兄?!」
ストーリー
何とか祈子(安永亜衣)を不良の道から救い出そうと必死に説得を続ける信也(風見慎吾)は、北斗七星会のメンバーに何度痛めつけられても食い下がる。それは、信也にとって祈子が今やなくてはならない存在であったからだ。そして、神島友平の事件についても、信也は真相は別にあると考えていた。
祈子も、友平の事件を冷静に振り返ってみることにした。友平が残したとされる遺書を改めて見てみると、確かに友平の字ではあるが、あまりに簡潔なのが不自然だ。事件が発覚してから6日間も塩沢湖の山荘に隠れていたのであれば、遺書を書く時間は十分にあったはずである。信也と共に事件の真相を探そうと祈子が思った矢先、信也の婚約者・亜矢子(生田智子)が現れ、自分が友平に殺された丸元利一郎の姪であることを祈子に明かす。そして信也が近々会社命令でニューヨークへ発つことも話した。祈子は「勝手にニューヨークでもどこでも行くがいいさ!」とヤケになって、一人で事件の手がかりを探そうとする。
一方、信也はニューヨーク出向を延期してほしい旨、社長の丸元賢三(長門裕之)に申し出るが、当然の如く反対される。両親にも反対されるが、信也はきっぱりと言った。祈子が自分にとって大切な人であると。
とある居酒屋で祈子は、父の秘密を握っているという元プロゴルファーの時田真介(石橋正次)を捕まえ、秘密を聞き出そうとしていた。時田は300万円の金を要求し、明日の夜、外人墓地で取引をすると祈子に約束する。
祈子は母・保子から自分のための貯金をもらい、時田に会いに行く用意をした。そんな時、北斗七星会の幹部・お花(松居直美)と順子(白島靖代)がブラックエンジェルに捕らえられたという知らせが入る。北斗には明日朝6時に晴海埠頭へ来いという挑戦状が送られていた。仲間を救うべく某所にて集結した北斗七星会。だが誰が垂れ込んだのか、そこには警察が張り込んでいた。凶器準備集合罪として北斗七星会は一斉検挙されてしまうが、祈子は親衛隊と共に辛うじて警察の手を逃れた。
そして朝。祈子はブラックエンジェルの前にたった一人で現れた。祈子はブラックエンジェルの会長とサシでの勝負を申し入れる。祈子の前に現れたブラックエンジェル会長、それは何と3年前に行方をくらました祈子の兄・徹(沢向要士)であった。徹は祈子を張り飛ばし、そして叫んだ。
「馬鹿野郎!どうして不良になんてなったんだ!祈子、お前には、お前にだけはこんな世界に来てほしくなかった!」
祈子は兄とは戦えない。一方、徹も祈子に対して気勢が上がらないのを見て、レディースブラックの会長・大崎冴子(大沢逸美)が代わって祈子と勝負することになった。背中の5番アイアンを引き抜いて冴子と戦う祈子。冴子が体勢を崩し距離が空いたその隙に、祈子は足元にあったコンクリートブロック片をクラブで打ち、冴子の太腿に命中させた。冴子は立ち上がれない。祈子は人質の二人を助け出し、徹のことが気になるも、その場から走り去るしかなかった。
その夜、外人墓地。時田と祈子の待ち合わせ場所である。だが、時田は祈子が到着する前に、何者かにナイフで刺されてしまう。時田は息を引き取る間際、やって来た祈子に「あんたの親父は無実だ」と言い残した。祈子は、死んだ時田のそばにいるところをパトロール中の警官に発見され、追われる身となってしまう。この時を境に、父の真実を求める祈子の過酷な旅が始まった。
ミニガイド
神島祈子は今、殺人事件の容疑者として追われています。でも、私は何もやっちゃいない。これはきっと罠に違いない。私の行く先々に、サツの旦那の懲りない面々が冷たい目を光らせている。その目の中に、私に敵意を持っている不気味が目が。あの男は一体誰なの?次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
前回ちょっと端折られていた、祈子が不良になる経過について、今回もう少し描かれる。保子と祈子がようやく横浜に落ち着き、食堂を始めたその頃、すでに祈子の心は荒んでいたのである。皿を拭いていた祈子が、突然その皿を床に叩きつけた。「こんなことをして何になるんだ!世間の目を恐れてこそこそ生きるなんてもう真っ平だ!・・・母さん、私は不良になってやる!不良になって、世間の奴らに思い知らせてやるんだ!」。そのまま祈子は家を飛び出してしまう。このシーンは毎回オープニングにも登場します。
なぜ「祈子(れいこ)」という名前になったかというエピソードが信也から語られる。祈子は難産で、母子共に危険な状態となり、父・友平は天に祈るより無かった。祈りが通じて無事に生まれたその子の名前を、友平は「礼子」と出生届に書いたつもりだったが、気がつくとそこには「祈子」と書かれていた。だが、友平はそれを訂正する気は無かった。そして、文字通り父の祈りの中から生まれた女の子として、友平は祈子に自分の夢を託したのであった。
父の秘密を知っているという時田に100万円をポンと差出し、「このくらいの金を右から左へ動かせるようでなければ北斗七星会の会長は務まらないからね」と見得を切った祈子だが、時田から「あと200万」と要求されると言葉を失ってしまう(笑)。彼女には100万円が限度だったようだ。幸い、母・保子が祈子のために貯めていてくれた貯金があったのだが、時田が死んでしまったので浪費せずに済みました。
祈子と信也がブラックエンジェルの闇討ちを逃れて海に落ちるシーン。波に揉まれながら信也が「君が僕にとってなくてはならない人だと分かった」というのを聞いた祈子、前回に引き続き「おためごかしを言うんじゃないよ!」と吐き捨てるように言うが、どうも意味合いが違うような気が?・・・。
徹の兄貴分で、暴力団華粋会の幹部・野沢剣二(萩原流行)。切れ味鋭い悪役っぷりがカッコイイ。だが、なぜ華粋会は祈子を目の仇にするのか。それは徹にも知らされない。
今回のミニガイドは、ゴルフコースをこちらへ向かって駈けて来る祈子と、次回の映像とのカットバックになっています。
◆第3話「さようなら!貴男」
ストーリー
殺人事件の容疑者として追われる身となってしまった祈子(安永亜衣)。飛び出していって自分は殺人などやってないと叫びたいところだが、祈子は既に凶器準備集合罪でも手配されており、不用意には動けない。
成田空港、ニューヨークへ出発する信也(風見慎吾)を見送りに来ている野上・丸元の両家族。信也はテレビのニュースで、祈子が殺人事件の容疑者として手配されていることを知る。信也は丸元物産社長の賢三(長門裕之)にニューヨーク行きの延期を申し出て、空港を飛び出してしまった。信也の婚約者・亜矢子(生田智子)の信也への強い思いから、賢三は1週間だけ彼に猶予を認めた。信也は北斗七星会のお花と順子がいるアジトを突き止め、彼らと一緒に祈子の行方と、殺人事件の目撃者を求めて奔走する。
その頃、祈子は変装して、図書館で3年前の事件に関する新聞記事を調べていた。そして、当時の事情を知る丸元賢三から直接真相を聞き出そうと、祈子は意を決してその夜、丸元邸に侵入。祈子は賢三をナイフで脅し、口を割らせようとする。だが、賢三はあくまで神島友平が犯人だという主張を曲げない。そこへ亜矢子が現れる。祈子は亜矢子から、信也はニューヨークへは行かず、祈子を探して横浜に向かったと聞かされる。
丸元邸から脱出し、夜の街に身を潜めている祈子。高架下を歩いていると、突然、スカーフで顔を隠しサングラスをした謎の男(萩原流行)が祈子に襲い掛かった。祈子は背中の5番アイアンで男を辛うじて退けてその場を逃れた。
誰かが私の命を狙っている・・・父・友平も自分のように、殺人者の汚名を着せられ、自殺と見せかけて殺されたのではないか・・・?祈子は渾然として悟るものがあった。
ミニガイド
(※今回は次回予告ではなく、ロックシンガー・沢向要士さんのアルバム「BURST OUT」のプロモ映像でした。)
MEMO今回のサブタイトルですが、同じ大映ドラマの『乳姉妹』でも「さよなら貴男」という回がありました(11話)。脚本はどちらも江連卓氏。
図書館で調べ物をしている祈子は普通の顔になっている。丸眼鏡が可愛い。だが、丸元邸に侵入する際にはビシッと“アイアンお祈”のメイクで決めています。
ブラックエンジェルのアジト。大きな瓶で牛乳を飲んでいる徹。徹は3年前、列車に飛び込もうとしていたところを、華粋会の野沢剣二に拾われたというエピソードが紹介されます。
◆第4話「破られた婚約」
ストーリー
父・友平が遺体で発見された塩沢湖にやって来た祈子(安永亜衣)。父は殺人の汚名を着せられて殺されたに違いない、父を殺した真犯人をきっと突き止めてみせる・・・祈子はそう決意した。友平が事件後しばらく身を潜めていた、あるいは閉じ込められていたのかも知れない山荘の中を調べていた祈子は、壁に架けられていた絵画の裏から、友平のスコアカードを発見。そこには友平の最後の言葉が記されていた。
祈子 何があっても負けるな
プロゴルファーになって
お父さんの夢を叶えてくれ
保子、徹と祈子を頼むぞ 友平
これが友平の本当の遺書だったのだ。そんな父の無念も知らず、父を恨んで不良の道に堕ちていった自分を、祈子は恥じた。そのとき、複数の男たちが入ってきて祈子を襲撃する。5番アイアンで応戦する祈子。そこへ兄・徹(沢向要士)が駆けつけ、命からがら祈子を山荘から逃がした。だが祈子の前には野沢剣二(萩原流行)が立ちふさがる。追い詰められた祈子は崖から川に飛び込み、どうにかその場を逃れる。
時田殺しについては、目撃者が現れて祈子の疑いは晴れた。しかし、凶器準備集合罪と丸元邸への不法侵入、丸元賢三(長門裕之)への脅迫容疑は残っており、祈子が指名手配されていることは変わりない。
祈子は次にどこへ現れるか。亜矢子(生田智子)の推測を元に、信也(風見慎吾)は3年前の事件があった北関東ゴルフクラブへ向かった。祈子はそこで、当時友平とプレーをしていたプロゴルファー・高倉道夫(国広富之)のキャディーに成りすましていたのである。
8番ホール、高倉の第一打は大きく逸れて林に入った。林の中で祈子は、高倉にナイフを突きつけ、事件の真相を聞き出そうとするが、祈子には彼の答えが信用できない。しかし問答が長引くとギャラリーに怪しまれる。祈子はその場は諦め、キャディの服を脱ぎ捨てて逃走。その夜、祈子は再度高倉を捕まえ話を聞こうとするが、彼はあくまで証言を撤回しようとしなかった。
その後、軽井沢にある野上家の別荘に身を隠していた祈子。そこへ信也が現れ、彼女に自首を勧めた。祈子は友平のスコアカードを信也に見せる。父の無実を確信した今、自首などしている暇はないと言う祈子を、信也が説得する。いつまでも逃げ回っていてお父さんの無実を晴らせるのか、自首して罪を償えば、誰に気兼ねすることなく堂々と動ける。信也は会社を辞めてまで祈子と行動を共にする覚悟をしていた。私のためにそこまで・・・信也の心に打たれ、祈子は自首を決意する。
ミニガイド
なし
MEMO
指名手配を受けながら各地を転々とする祈子。一体どうやって寝泊りしているのだろうか。あと、逃げ回るのにあの衣装は目立ち過ぎではないか・・・。
信也は会社に辞表を出し、亜矢子には婚約解消を申し入れる。祈子のことで自分の心は一杯だと、正直に話す信也。だがプライドの高い亜矢子は諦めない。「・・・神島祈子、私はあなたなんかに負けない、どんなことをしても、信也さんの心からあなたを追い出して見せるわ!」
◆第5話「さらば不良少女」
ストーリー
父は殺人の汚名を着せられて殺された・・・祈子(安永亜衣)はそう信じるに至った。父の真実を掴むため、祈子は自首して、綺麗な体になって戻ってくることを誓う。ひとり警察に出頭する祈子を、母・保子(音無美紀子)や信也(風見慎吾)、そして北斗七星会の仲間たちが見送った。
祈子は少年鑑別所へ送致される。ここで、釈放されて保護観察処分になるか、あるいは少年院へ送られるかが決まる。もし少年院に送られたら2~3年はかかってしまう。祈子は自首したことを少し後悔していた。
鑑別所で共同生活が始まる。先に凶器準備集合罪で捕まっていた北斗七星会の幹部も入っていた。祈子は、ここを出たら北斗七星会を解散すると宣言。彼女にはもう不良をやっている時間はないのだ。解散に反対する者がいるとしても、祈子は会長を引退することを決めていた。会長が引退すれば、掟により解散となる。かつての抗争相手も入所していたが、祈子は、挑発を受けても軽はずみな真似をしないよう仲間に周知する。
とあるプールバー。華粋会の野沢剣二(萩原流行)は、レディースブラックの会長・大崎冴子(大沢逸美)を鑑別所に送り込むことを企てる。冴子は祈子の兄・徹(沢向要士)に思いを寄せていたが、徹の華粋会への昇進を餌にして彼女を利用したのだ。
北斗七星会の仲間たちが釈放されたのと入れ替わりに、冴子が鑑別所に入ってきた。その日から執拗に祈子を挑発する冴子だが、祈子は信也との約束を守って必死に耐えていた。
祈子に面会を求める者があった。信也だと思い喜び勇んで面会室へやって来た祈子を待っていたのは、信也の母・静子(久我美子)であった。「信也のことを思う気持ちがあるなら身を引いて、信也の人生を返しなさい」と言う。にわかに納得できない祈子だが、信也のことを思えば、諦めるべきなのだ。祈子はとうとう「私は二度と信也さんには会いません」と約束してしまう。祈子の胸は鋭く切り裂かれ、絶望に打ちのめされる。
ミニガイド
神島祈子は今、耐え忍んでいます。規律正しい毎日の生活の中に、時折り忍び込む黒い隙間風。そっと後ろを振り返ると、私を暗黒の世界へ引きずり込もうとする悪魔の手先がほくそえんでいる。その連中の仕掛ける挑戦に、私はじっと耐えるしかないのだろうか・・・。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
オープニングナレーションが新バージョンになりました(セリフ自体は同じ)。前回までより若干テンションが高い?。また、オープニング映像の効果音(ボールがカップに入る音など)が少し大げさになったような気がします。
食堂「あすか」のメニューには、名古屋名物・みそ煮込みうどんもある。お餅も入って700円。
全員で「いい日旅立ち」を合唱して友を送り出すのは『不良少女とよばれて』の影響か?。警察に出頭する日、大粒の雨が降っているのに、傘も差さずに出かける祈子。
鑑別所の男子房。祈子が鑑別に入って来たのを知った北斗七星会の新巻鉄男(斉藤隆治)と秋葉清(織田裕二)は、グラウンドでランニングしている祈子を見て「あれは本当に会長なのか?」と一瞬戸惑う。清は「会長のスッピンなんて初めてだから、オレ面食らっちゃうよ。あんな顔してたんだ・・・」と正直な感想を漏らす。無理もないと思います(笑)。
鑑別には、かつて祈子たちと抗争を繰り広げた“川崎グループ”の頭・沼田テルヨも入っていた。彼女の額には、当時祈子によって付けられた大きな傷跡が残っている。祈子は彼女の仕返しに黙って耐え、ひたすら許しを乞う。ここでは、過去の怨恨をぶつけられてじっと耐える祈子の姿に視聴者は同情すべきなのかも知れない。しかし、回想シーンを見ると・・・
北斗七星会と川崎グループの面々が木刀とか鉄パイプを持って(いわば正攻法で)大乱闘をしているさ中、祈子はしばらく高みの見物をしていたが、ふと気が向いたように地面に降り立つ。そして、足元に転がっていたコンクリート片を5番アイアンでフルスイングし、他の相手と闘っていたテルヨの額に命中させたのである。これを見る限り、どう考えても祈子の方が圧倒的に卑怯かつ悪質だ。「許してね」で済む話ではない・・・。
鑑別所での座禅の時間。正座をしている祈子の足の裏、本当に画鋲刺さってますけど・・・。吹き替えなのか本人の足なのか・・・?
◆第6話「少年院が待ってるぜ」
ストーリー
鑑別所の祈子(安永亜衣)は、面会に現れた信也の母・静子(久我美子)に言いくるめられ、「信也にはもう会わない」と約束をする。その後、祈子の母・保子(音無美紀子)と信也(風見慎吾)が面会にやって来たが、祈子は保子とだけ会い、「私のために信也さんの人生を台無しにすることはできない。今までは信也さんに甘えていた。だからもう会わないって決めた」と話す。保子からそれを聞いた信也だが、祈子への思いは変わらない。「祈ちゃん、僕を信じろ。もっともっと僕を信じろ・・・!」
鑑別所で部屋換えがあった。レディースブラックの大崎冴子(大沢逸美)が入所して以来、所内の空気は一変し、彼女の息のかかった者たちから祈子は執拗な嫌がらせを受ける。祈子を挑発して所内で間違いを起こさせ、彼女を少年院送りにしようという狙いからだ。
信也は再び面会に訪れるが、やはり祈子は応じない。信也は鑑別所の森戸所長(下川辰平)の部屋に呼ばれ、そこで祈子のことを全て話す。ちょうど所長は、部屋に祈子を呼んでいた。思いがけず信也は祈子と顔を合わせることになるが、祈子はそこで信也に暴言を吐いて見せる。少年院送りになるかもしれないが、祈子はこれで信也が自分を諦めてくれれば良いと考えたのである。
鑑別所での調理実習の時間。祈子は冴子から、北斗のメンバーや信也が華粋会の野沢剣二(萩原流行)に痛めつけられていることを聞く。さらに、祈子が作っていた料理の中に大量の唐辛子や胡椒を入れられて、遂に堪りかねた祈子は冴子にタイマン勝負を申し出る。時間は午前3時、礼拝堂。信也との約束を破ってしまうことに、祈子の心は痛んだ。
約束の時間、祈子は礼拝堂に現れたが、冴子と勝負する気はなかった。何も抵抗せず、良いように冴子に殴られる祈子。やがてその現場に、森戸所長や看守が現れる。この勝負は冴子の負けであった。
傷の手当てを受け、森戸所長に呼ばれた祈子。森戸は祈子が入所以来、その更生の意志を見極めようと務めていた。信也との約束を信じ、目的に向かって真っ直ぐ進む自分を信じ切った祈子を、森戸もまた信じてくれた。祈子は、初めて大人が自分を信じてくれたことに心を動かされる。
鑑別所での様子では祈子が保護観察処分で釈放になる可能性が高いという情報を得た剣二は、祈子の兄・徹(沢向要士)を唆し、祈子の少年院送りが決定したと嘘を吹き込む。徹は鑑別所から祈子を奪い返すことを決意、仲間を集めて鑑別所へ乗り込もうとしていた・・・。
ミニガイド
神島祈子は今、人を信じ、人を愛することの大切さを知りました。そんな人の為にも、高い塀から逃亡する誘惑に、私は負けるわけにはいかないのです。そして、私の前に立ちふさがる大崎冴子。将来、父の無実を求めてさまよう私の旅路の行く先々で、彼女はどんな役割を果たすのだろうか。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
祈子はお風呂で自分の衣服を隠されたり、自分の布団を勝手に使われたりと、様々な嫌がらせを受ける。お風呂のシーンは「時間ですよ」状態。
◆第7話「涙の引退式」
ストーリー
徹(沢向要士)は祈子(安永亜衣)を奪回すべく、ブラックエンジェルの仲間を率いて鑑別所へ乗り込む。所内に潜入した徹は冴子(大沢逸美)を独房から出し、続いて祈子を連れ出そうとするが、祈子は抜け出すつもりはないと答える。徹が祈子の意志に従うとみるや、冴子は祈子にナイフを突きつけ、騒ぎを起こそうと図る。祈子をめぐり屋外で大乱闘になるが、やがて看守に発見され、徹たちは冴子と共に脱出する。祈子は塀を乗り越えたい衝動に耐えて留まったのだ。
やがて、家庭裁判所の審判の日がやって来た。祈子は保護観察処分となり釈放される。娑婆に戻った祈子は、北斗七星会のメンバーに、自分は会長を引退すると宣言。鑑別所に入ったときから祈子の心はそう決まっていた。そして、父の無実を証明し、プロゴルファーになって父の夢を叶えるのだ。その日、埠頭にて祈子と親衛隊の引退式が執り行われた。そして夕暮れ、一人の普通の少女に戻った祈子は、信也(風見慎吾)と二人で静かな海辺を歩く。「祈ちゃん、綺麗だよ」・・・信也の言葉に、祈子は胸をときめかせる。
その日は全てを忘れて二人の時間を楽しむ信也と祈子。そして明日からは、事件の真相を求めて、当時のキャディーをしていた瀬戸久仁子と堂島兼子を探すのである。二人の試練の旅が始まろうとしていた。
ミニガイド
神島祈子は今、試練の場に立たされています。キャディーの堂島兼子さんからゴルフの勝負を挑まれたのです。父の事件の真相を知るためにも、負けることはできません。眠っていた私のゴルフへの情熱が、ふつふつとたぎって来ます。
「父の夢 乗せてボールは フェアウェイ 今日は祈子の ゴルフ記念日」
次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
今回の最大のポイントはやはりミニガイドでしょう。いきなり短歌を詠む祈子、それもサラダ記念日!(笑)。そう言えば「サラダ記念日」の出版はちょうど「祈子」がオンエアされた1987年でした。祈子が第一打のスイングをするシーンが映りますが、ボールはあさっての方向へ。「ぷっ」と思わず自分で吹き出してしまう安永亜衣さん。明らかにNGシーンですね。例の短歌といい、今回のミニガイドは真面目なのかギャグなのかよく分かりません。
徹は冴子をブラックエンジェルから永久追放する。徹のバイクにしがみつき、引きずられる冴子が全く無傷なのは何故・・・。
祈子が鑑別所を出る日、またしても「いい日旅立ち」で見送る仲間たち。
北斗七星会のメンバーと信也は、祈子の実家である食堂「あすか」で祈子の出所祝いを開く。神奈川県最大の不良グループであった彼らも、すっかりこの大衆食堂が馴染んでいるな・・・。そんな所へ鑑別所を脱走した冴子が現れ、祈子に勝負を挑んだ。祈子は唐突に、ゴルフをやってみないかと冴子に勧める。冴子が高校のソフトボール部でピッチャーだったことを祈子は何故か知っていて、ソフトボールの選手から一流のプロゴルファーになった人もいるという話を紹介するのだが・・・。
冴子は祈子の兄・徹を愛している。だが冴子は、徹が実は祈子を愛していることを本能的に察知していた。兄と妹以上の感情があると睨んでいるのだ。それは徹自身も気付いていた。祈子と信也が親しくなって、自分はなぜ胸が痛むのか。妹に好きな男が出来たら、兄として祝福してやるのが当然ではないのか、と・・・。
◆第8話「バンカー蟻地獄」
ストーリー
3年前の事件当日のキャディーは瀬戸久仁子と堂島兼子。しかし、二人とも事件の後、北関東ゴルフクラブを辞めており行方が分からなくなっていた。
祈子(安永亜衣)と信也(風見慎吾)は、まず瀬戸久仁子の息子を訪ねるが、息子である彼も母親の行方を知らないという。不審に思った二人は、彼が妻子と共に下田に出かけるのを尾行し、下田で瀬戸久仁子と会うのを突き止めが。だが二人が瀬戸久仁子に事件のことを尋ねても、彼女は頑なに口を割らない。だが、彼女の孫が海に落ちたのを祈子と信也が助け出したことから、重い口を開いた。瀬戸久仁子は、直接は事件を見ていないが、堂島兼子から大体のことを聞いたという。だが事情があって、その内容は話せないらしい。そこで二人は、堂島兼子が勤めているゴルフ場を聞き出し、そこへ向かった。
兼子がいる伊豆オーシャンゴルフクラブを訪れ、彼女に話を聞く祈子と信也。だが彼女の話にも、祈子にとっては腑に落ちない点があった。疑問をぶつける祈子に、兼子はゴルフの勝負を持ちかける。祈子が勝てば、兼子は自分が知っていることを一つ教えるというのだ。その代わり、祈子が負ければ賭け金として30万円を払うという条件である。祈子は受けて立った。
勝負はワンホールマッチ。2番ホール、パー3、143ヤード。兼子は5番アイアンで無難にグリーン周りのバンカー手前に落とした。引き分けでは意味がない。祈子はウッドの5番を使いグリーンに直接乗せようとするが、ボールはグリーンを転がってバンカーへ吸い込まれてしまった。第2打、兼子は確実にピン横へ寄せる。一方、祈子はバンカーからバーディを狙った。自分がこんな人に負けるはずがない、その慢心から、祈子のショットは再びバンカーに飲み込まれる。
兼子のパーパット、彼女は難無くカップに沈めた。同じくパーを狙う祈子だが、バンカーから直接カップインはならず、祈子の負けが確定。無残な敗北を喫し、祈子はうなだれた。祈子の心には、自分の天分への驕りがあったのではないか。信也に指摘され、祈子はもう一度一からゴルフの練習を始めることを決意する。
そんな頃・・・鑑別所を脱走していたレディースブラックの大崎冴子(大沢逸美)は、逡巡の末、祈子とゴルフで決着をつけることを期して更生を誓い、鑑別所に戻った。将来、彼女は祈子の好敵手として再び現れるのだろうか。
ミニガイド
神島祈子は今、敗れ去りし者のほろ苦さを味わっています。しかし、信也さんの無言の励ましが、痛く、優しく包んでくれる伊豆の浜辺。もう一度戦いたい、堂島兼子さんと。それがプロゴルファーへの第一歩を刻む道しるべとなることを、私はいま感じるのです。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
事件当時のキャディー・瀬戸久仁子は昭和14年6月15日生まれ、堂島兼子は昭和12年8月20日生まれ。瀬戸久仁子の当時の証言は「フェアウェイでカートを押していたので事件には全く気付かなかった」、堂島兼子の当時の証言は「林の中でボールを捜すのに夢中で事件には気づかなかった」。
堂島兼子との勝負に30万円の賭け金を要求される祈子。北斗七星会会長の頃ならばその程度の金は右から左へ動かせた祈子だったが(第2話)、今では「そんな大きなお金・・・」と尻込みしてしまう。しかし幸い、信也が用意してくれることになる。
◆第9話「婚約者の復讐」
ストーリー
3年前の真実(と、30万円)を賭けて堂島兼子(富永ユキ)に挑んだワンホールマッチで、祈子(安永亜衣)は自らの驕りから無残な敗北を喫した。その日から祈子は、信也(風見慎吾)と共に雪辱を誓い特訓を始める。
その頃、信也のことを諦め切れない亜矢子(生田智子)は自宅のお手伝いから情報を得て、祈子と信也が練習をしている伊豆オーシャンゴルフクラブに乗り込んだ。彼女は、経営者の強みで二人に圧力をかけ、ゴルフ場から締め出してしまう。「・・・負けない、私が祈子さんに負けてたまるもんですか!」
祈子と信也は仕方なく、海岸でバンカーショットの練習をすることになった。激しい練習で、祈子の手のひらには血が滲んでいた。信也は思わずその手に口づけをしてしまう。崖の上からその様子を険しい形相で見つめる亜矢子。やがて二人の前に降りてきた亜矢子から、母が心労で倒れたことを聞かされる信也。だが今の信也には、祈子と行動を共にすることしか頭に無い。ただひたすら亜矢子に土下座して詫びる信也。祈子への恨み冷めやらぬ亜矢子は、彼女に「宣戦布告」をする。
厳しい練習を重ね、堂島兼子に再勝負を申し込みに行く祈子と信也。中々承諾してもらえなかったが、雨の中ずっと待ち続ける二人に根負けして、彼女も遂にリターンマッチを受け入れた。その頃、祈子の兄・徹(沢向要士)に、華粋会の野沢剣二(萩原流行)から「伊豆にいる祈子のところへ行け」と命令が下る。それを察知した祈子の仲間・元北斗七星会のメンバーも伊豆へやって来た。
堂島兼子と祈子の再勝負の日。4番ホール、グリーンまで186ヤード、パー3の谷越えコースである。祈子の第一打はまたしてもバンカーへ。一方、兼子はグリーン横のラフへ落とす。祈子はバンカーから直接カップインを狙うが果たせず、結局、勝負は共にパーで引き分けに終わる。だが、祈子のひたむきさが遂に兼子の心を動かし、彼女は3年前の真相を語り始めた。
兼子の話によると・・・。事件のあったホールで、祈子の父・神島友平(岡本富士太)のショットはフェアウェイに落ちたという。それまでの証言では、友平のボールは大きくスライスしてブッシュに入ったとされていたが、そうではなかったのだ。そして、殺された丸元利一郎(佐原健二)のショットは証言どおりブッシュへ入ったという。そして、ブッシュの中で利一郎がボールを動かすのを友平が目撃、二人は激しい口論になり、もみ合いの中、偶然のはずみで友平のクラブが利一郎の頭を強打してしまったというのだ。そして、キャディーの兼子が救急車を呼びに行った時点では、利一郎はまだ生きていたという。
兼子がそこまで話した時、林の中に潜んでいた徹とブラックエンジェルの配下が祈子たちの前に姿を現し、祈子と信也を捕らえようとする。二人の運命は・・・。
ミニガイド
なし
MEMO
サブタイトルから想像して、亜矢子さんが繰り広げる祈子への愛憎劇で一本押し切ってしまうのかと思ったら、話のメインは祈子と堂島兼子さんのリターンマッチでした。
亜矢子さんの愛車は、品川53、24-06、白のソアラ。
堂島兼子さんはアパート「潮路荘」で一人暮らしをしている。祈子に根負けして、再挑戦を受けることになるが、今回もしっかり賭け金は要求している(50万円)。もし祈子が負けていたら、またしても信也さんの貯金から払われるところでした。しかし、祈子も第2話で母から少なくとも200万円の預金通帳を受け取っているはず・・・。
◆第10話「血鎖の秘密」
ストーリー
ブラックエンジェルから逃れて、林の斜面を転がり落ちて行く中、祈子(安永亜衣)と信也(風見慎吾)ははぐれてしまった。やがて、祈子の前に兄・徹(沢向要士)が姿を現した。徹は祈子に、自分も父の無実を信じており、祈子を狙う華粋会の目的を探るために、あえて剣二の命令に従っているように装っているのだと話す。徹は、信也を探しに行こうとする祈子に、信也なら無事だ、と言って当て身で気絶させ、山中の川原に隠しておいた自分の車へ運びこんだ。
夜が明けた。朝日が水面に映える渓流で、ようやく単なる兄と妹として対面した徹と祈子は、幼少時代に帰ったように無邪気に川遊びに興じた。だが徹はこの時、祈子と二人っきりになったのが実は初めてであるかのような奇妙な感覚を抱いており、祈子の信也に対する気持ちに反発する自分にも気付いていた。
徹は祈子を連れて、自分が用意しておいた隠れ家に向かう。だが、二人の車は華粋会の野沢剣二(萩原流行)に尾行されていた。徹は華粋会に捕らわれてしまうが、祈子はバイクで駆けつけた北斗七星会の鉄男(斉藤隆治)に助けられ、その場を脱出する。
祈子からの連絡で、祈子の母・保子(音無美紀子)は、徹が華粋会に捕まっていることを知る。保子は野上敬太郎(中条静夫)に力を貸してほしいと頼み込むが、敬太郎は、もはや徹のことは自分とは関係がない、と断った。続いて保子はバー「サムシング」を訪ね、ママの大木優子(中村晃子)に頼みに行くがやはり断られてしまう。保子は意を決して自ら華粋会に出向き、徹を返してほしいと剣二に懇願するが、徹はいないと白を切られて追い出されてしまう。そんな様子を、物陰から優子が見ていた。
その頃、敬太郎は丸元賢三(長門裕之)を訪ねていた。賢三のツテを使って華粋会に囚われている或る青年を救ってほしいと依頼する敬太郎だが、賢三はこれを撥ねつけた。また一方、信也には北斗の鉄男から連絡があり、祈子は一人で華粋会に乗り込むつもりだと聞かされる。
その夜、華粋会の事務所。徹は拷問を受け、地下室に囚われていた。事務所に忍び込む人影、それは優子であった。その頃、祈子も5番アイアンを手に華粋会に向かっていた。地下室に辿り着いた優子は徹を助けようとするが、そこへ剣二が姿を見せる。馴染みの店のママに過ぎない優子が、なぜ徹のためにここまでするのか。剣二に詰問され、優子は遂に真相を語り始めた。徹は優子が産んだ子だったのである。
ちょうど地下室にやって来た祈子も、廊下でその話を聞いてしまった。動揺した祈子は5番アイアンを床に落とし、剣二に気づかれてしまう。剣二は逃げる祈子を追って部屋を飛び出した。祈子は階段を上がった廊下でボールをセットし、剣二を待ち受ける。祈子の打ったボールは鋭くホップして剣二の左胸に命中、剣二は倒れた。「馬鹿野郎!!」祈子は叫ぶと、そのまま外へ飛び出した。実の兄と信じて疑わなかった徹の出生の秘密に触れて、胸の中に波打つ怒りとも悲しみとも分からぬ激情に追われるかのように、祈子は闇雲に走り続けていた。
ミニガイド
なし
MEMO
今まで劇中で断片的に描かれていた神島保子・徹・野上敬太郎・大木優子の複雑な関係が、ようやく一本の糸に繋がります。優子の回想シーンで、徹が神島友平・保子に貰われていく様子が描かれますが、これを見ると神島夫婦も随分冷酷だと思う・・・。
川遊びに興じる祈子と徹。黒のジャケットを着たままズボンの裾をまくって川に入っている徹・・・ブラックエンジェルの時とのギャップが微笑ましい。
徹が囚われている華粋会の事務所。部屋で雑談している組員たちの前に剣二がやって来て、唐突に言う。「・・・祈子が来るぞ!」。「まさか・・・?」と戸惑う組員たちだが、剣二は構わず続ける。「・・・俺には祈子の心の動きがよく見えるんだ。祈子という女、兄貴が殺されそうになってるのを黙って見過ごすなんて出来ねえ性分さ。・・・まあ夜中過ぎだろう。お前たち、今のうちにメシ食って来い」。
言われる通り食事に出る組員たち。「兄貴は?」「・・・俺はここで見張ってる」。祈子のことなら何でも知っている、そして実に子分思いな剣二アニキでした。
ビルの谷間、ショットしたボールをビリヤードのようにコンコンと壁にぶつけて器用に見張り二人を同時にやっつける祈子。接近戦だと大の男には苦戦する祈子だが、相手との間に十分な距離があり、かつボールを持っている場合ならばまさに敵無しです。
◆第11話「敵?謎の美少女」
ストーリー
徹(沢向要士)の無事を祈っている保子(音無美紀子)のもとへ、祈子(安永亜衣)が生気のない顔で帰って来た。祈子は徹の無事を伝え、そして、徹が本当の兄でないというのは本当かと尋ねる。保子は、徹はあくまで自分たちの子だと主張するが、やがて優子(中村晃子)が産んだ子であることを認めた。だが、その父親については口を閉ざした。信じて疑わなかった家族の絆が偽りであったことに揺れ動く祈子は、ゴルフの練習に打ち込むことでそれを振り払おうとする。
徹は優子の部屋に寝かされていた。そこへ保子が訪れ、徹を連れて帰ろうとするが、徹の産みの親である優子は拒絶する。確かに優子は保子との約束を破って親子の名乗りをしてしまったが、そうしなければ徹は殺されていたかも知れない。優子は徹が健やかに育っていると信じて20年間耐えてきたのに、優子の前に姿を現した時の徹は不良の道に落ちていた。そのことで保子をなじる優子。二人がそんな話をしている所へ徹が姿を見せ、自分の父親は誰なのかと問い詰めた。だが、二人ともそれには答えられない。徹は自分で父親を突き止めようと飛び出して行った。
祈子が練習していたゴルフ場に、丸元亜矢子(生田智子)と、プロゴルファーの高倉道夫(国広富之)が現れた。亜矢子は、祈子に負けたくない一心で、高倉のコーチを受けることにしたのである。祈子は二人の会話から、その夜、高倉と丸元賢三(長門裕之)が赤坂の料亭で会う約束をしていることを知る。
芸者に成りすまし、高倉と丸元が会談している座敷に潜入した祈子は、丸元利一郎殺しの事件当時のキャディーから聞いた事件の真相を二人に付き付けるが、彼らは自分の証言を曲げようとしない。祈子は二人が嘘を言っていると確信するが、ここで騒ぎを起こせば警察に通報されてしまう。祈子は高倉に言われるままに大人しくそこから逃げ出すしかなかった。
その夜、野上敬太郎(中条静夫)、静子(久我美子)、信也(風見慎吾)が買い物から帰宅すると、部屋の中には徹が待っていた。徹は、優子がかつて勤めていた料亭を当たって、当時を知る元置屋の女将を脅迫して真相を聞き出していた。徹の父親は敬太郎だと言うのである。彼が明かした真実に、静子や信也、そして、ちょうど野上家を訪ねて来ていた祈子と保子は、大きな衝撃を受ける。部屋で荒れ狂う徹は、敬太郎に積年の恨み言をぶちまけ飛び出していった。
夜の公園を歩いている信也と祈子。信也は、ショックを受けている母・静子にしばらく付き添い、そして改めて父を交えて徹のことを話し合うつもりだと言う。友平の無実を証明する旅から自分は少し離れてしまうが、その間はゴルフの練習だけに専念し、決して無茶な事はしないようにと祈子に約束させて、信也は家に戻った。
その後、お花(松居直美)に呼ばれて一緒に帰ろうとした祈子の前に華粋会の男たちが現れ、祈子を捕らえようと襲い掛かってきた。丸腰だった祈子はピンチに陥るが、その時突然、何処からか放たれたゴルフボールが、祈子を襲う男たちに命中する。祈子が見た先には、5番アイアンを手にした謎の少女が立っていた。彼女は二個のボールを同時にショットして男二人に命中させて倒すと、手にした5番アイアンを振るって、たちまち残りの男たちを蹴散らしてしまう。礼を言って彼女の名前を尋ねる祈子に向かって、少女は口を開いた。
「・・・私の名は司鏡子。祈子、私はお前を助けたんじゃないよ。私はお前を滅ぼすために、鏡の国からやって来たのさ!」
少女は不敵な笑みを浮かべて5番アイアンを背に戻すと、何処ともなく去って行った。やがて祈子のライバルとなるこの少女には、祈子を恨む恐るべき秘密が隠されていたのである。
ミニガイド
鏡の国から来たという司鏡子。・・・私と同じようなゴルフボール大の傷跡を持つ少女。彼女もまた、謎の世界を秘めたさすらいの少女なのでしょうか・・・。
MEMO
新キャラクター・司鏡子(土家里織)の鮮烈な登場シーン、一瞬「アイアンお祈のニセモノか!?」と思ってしまいましたが・・・(笑)。「私はお前を滅ぼすために、鏡の国からやって来たのさ!」という突拍子もない大仰な名乗りを挙げると、手にした5番アイアンをクルッと回して背中に装着し、不敵な笑みを残して去って行く。今回は徹の出生を巡るドラマが時間的には多くを占めますが、サブタイトルが示すように、最後に一番イイ所をさらって行ったのは司鏡子でした。
鏡子の衣装はアイアンお祈と非常によく似ているが、目に付く相違点としては、黒いベストの下に、祈子は開襟タイプのシャツ、鏡子はタートルネックを着ている点が挙げられます。撮影が冬場に入り、アイアンお祈の登場時(10月~11月)より寒くなって来たためでしょうか(本話の放映日は1988年1月6日)。
キャディーに化けたり芸者に化けたり・・・。丸元賢三の言う通り、祈子の行動力には恐れ入ります。
ミニガイドで紹介されるシーン、鏡子と対峙した祈子が「お前のような奴はね、私のこの傷が許さないんだ!」と啖呵を切って胸の傷跡を見せる。だが、鏡子が自ら開いて見せた右胸にも同じような傷跡があった。二人の間にはどんな因縁があるのか?そして、祈子の仲間・お花は、鏡子のことを知っているらしい・・・。次回が楽しみです。
◆第12話「鏡の国から来た娘」
ストーリー
祈子(安永亜衣)の実家である食堂「あすか」の厨房。祈子が室田花子(松居直美)に、鏡子(土家里織)のことを尋ねていた時、突然、窓ガラスを割ってゴルフボールが店内に打ち込まれる。祈子は、鏡子からの宣戦布告だと直感した。
夜の街に出没した鏡子は、ふらりと一軒のライブハウスへ入って行った。ひそかに鏡子の後を追って来ていた花子は、祈子には手を出さないでほしいと鏡子に頼み込むが聞き入れられない。鏡子は逆に、祈子の兄・徹(沢向要士)の居所を探し、信也(風見慎吾)もそこへ連れて来いと花子に命じた。店を出た花子は、始終を陰で見ていた仲間たちから、鏡子との関係を問い詰められる。花子は、自分は鏡子から大変な恩義を受けていて鏡子の言うことには逆らえない、と打ち明け鏡子に言われるまま街に消えて行った。
その頃、野上家では、徹の件を巡って信也と両親の話し合いが行なわれていた。徹を家族として認めるのか、あるいは敬太郎(中条静夫)が徹を自分の子と認めて徹に詫びるか。だが敬太郎はあくまで徹は自分の子ではないと主張し、話し合いは決裂。そんな所へ、窓の外から花子が信也に呼びかけた。徹の居所が分かったと聞いた信也は花子と出かける。
花子に案内された埠頭で徹を見つけた信也は声をかけるが、徹は兄である信也と打ち解ける様子はなかった。徹は信也に「俺は祈子が好きだ」と宣言し、二人は殴り合いになってしまう。その時、花子の背後から現れた鏡子がショットしたゴルフボールが徹と信也に命中し、気を失った二人は鏡子の部下たちによって何処かヘ連れ去られてしまった。そして鏡子は花子に、徹の居所を餌に祈子をおびき出すよう命じた。
翌朝、祈子は花子から徹の居所が分かったと連絡を受け、現場へ向かう。だが、祈子が辿り着いたその古い建物には鏡子が待ち構えており、傷付いた徹と信也が柱に縛られていた。鏡子は、徹と信也を人質に、祈子と一対一の決闘を挑む。二人の戦いのさ中、花子は隙を見て徹と信也を救出し、彼らは祈子と鏡子の争いに割って入る。鏡子は「こう邪魔が入っちゃスカッと勝負という具合には行かないね。祈子、お前の命はしばらく預けておくよ」と引き上げたが、花子は鏡子の部下に捕らわれてしまった。
残された祈子、そして徹と信也。徹は、今や妹ではないと判明した祈子に、愛の告白をした。思いがけない言葉を聞いて祈子は戸惑いを隠せない。徹は「俺は信也からお前を奪ってみせる」と言い残して走り去った。
そんな頃、鏡子の出現に恐れおののいている者たちが他にもいた。丸元賢三(長門裕之)とその妻・律子(岩本多代)である。彼らにとって鏡子は祈子に続く災いの種であった。そこへ娘の亜矢子(生田智子)が、御殿場のプロゴルファー養成所に入るためすぐに発つと言い出した。このまま何もしないで信也を待っていることには耐えられない、そして祈子とはゴルフで決着を付けたいと言って、亜矢子は家出同然に飛び出してしまう。
賢三は怒り心頭、野上家に乗り込んで敬太郎に絶縁状を叩きつけ、会社間の取引も今後一切中止すると通告して帰った。そこへちょうど祈子と一緒に信也が帰って来た。敬太郎と妻・静子(久我美子)は、祈子こそ全ての元凶であると、あからさまに彼女を非難した。
いたたまれずその場から飛び出した祈子は、玄関先で泣き崩れてしまう。なぜ皆バラバラになってしまうのか・・・徹も、花子も、野上家の人たちも。この世に真実の光を求めることが、なぜ人を傷つけ、憎しみだけを募らせることになるのであろうか。真実を求めることは罪なのか。自問自答を繰り返す祈子の胸に、悲しみだけが溢れていた。
ミニガイド
神島祈子は今、真実を求めて生きています。でも、その答えはいつも辛く悲しいことばかりです。人には知られたくない過去の秘密。私の友達の花子に、司鏡子と昔からの繋がりがあろうとは。そして舞い込んだ果たし状。祈子はまた傷付き喘ぎながらも真実の坂を踏み締めて行きます。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
5番アイアンを背に悠々と夜の街を闊歩している鏡子に、「肩に挿した5番アイアンは何の真似だ!俺たちの元の会長をからかう気かよ!」と因縁を付ける現・北斗七星会の男たち。北斗七星会は、会長の祈子をはじめ主要メンバーこそ引退したが、会自体が解散したわけではなかったのである。だが彼らは鏡子の前にコテンパンに叩きのめされてしまいます。
徹の居場所へと向かう祈子が着ている青いジャケット、どう見てもサイズ大き過ぎ(袖も折っている)。男物か?似合ってないです。
「ライブハウス・リバプール」で、5番アイアンを背にしたまま優雅にピアノを弾いている鏡子。この“有り得なさ”と言うか、“とんでもなさ”が実に大映ドラマ的で楽しい。曲は「エリーゼのために」。
今回、思いがけず鏡子と対決することになった祈子。当然5番アイアンは持って来ていないため、武器として鉄パイプを与えられる。「お前のような奴はね、私のこの傷が許さないんだ!」と自分の左胸の傷痕を鏡子に見せる祈子。すると鏡子はひるむどころか、自らの右胸を開いて見せる。そこには祈子と同じようなゴルフボール大の傷痕があった。「私はお前の鏡だよ。お前の左胸に傷があれば、私の右胸に傷があるのが当たり前じゃないか!」。・・・ところで、鏡子は誰にボールをぶつけられたのだろうか?
◆第13話「決闘!富士の裾野」
ストーリー
徹(沢向要士)からの突然の愛の告白と、崩壊する信也(風見慎吾)の家族を目の当たりにして、祈子(安永亜衣)は悲しみに暮れていた。そんな時、祈子と信也の前に現れた丸元亜矢子(生田智子)は、信也を賭け自分もプロゴルファーになって祈子に挑戦すると宣言した。動揺する祈子に向って信也は、今はゴルフにだけ専念し、司鏡子(土家里織)とは決して争ってはならないと厳しく忠告する。
その日、食堂「あすか」に、鏡子の手から解放された室田花子(松居直美)が傷だらけの姿で戻って来た。二階に寝かされ落ち着きを取り戻した花子は、祈子たちに、鏡子と自分の関係について重い口を開いた。花子は中学時代に両親の強要でやっていた当たり屋の常習で逮捕されて少年院に送られ、そこで鏡子と出会ったのだという。
・・・少年院での生活で酷いいじめの標的となってしまった花子は、ある時、授業中に無理やり歌を歌わされ、教官の怒りを買ってしまう。だが、そのとき花子を庇い、いじめグループに食事も取り上げられて衰弱していた花子に代わって自ら教官の制裁を受けて出たのが鏡子だった。
それから数日後の夜、花子は、鏡子に制裁を加えた教官といじめグループが一緒になって酒盛りをしている現場を目撃。憤激した花子は彼らと乱闘になるが、その時、何処からかナイフが投げつけられ壁に突き刺さる。そこへ現れたのは鏡子だった。彼女は、堕落腐敗した教官やグルになっていた者たちを鋭く見据えて非難し、花子の味方に付く。教官は鏡子を容赦なく殴打するが、鏡子は無抵抗を貫いた。
見かねた花子が、壁に刺さったナイフで教官を刺そうとした時、鏡子がそれを制止した。過去に殺人を犯したことのある鏡子は、人を殺した者の魂がどれほど無残に砕けてしまうかを花子に言って聞かせ、彼女からナイフを奪うと、自らの手で教官を刺してしまう。花子を自分のような魂の抜け殻にさせないために、鏡子はいわば花子の身代わりとなったのである。刺された教官は命を取り留めたが、鏡子は少年刑務所へ送られることになった。・・・これが花子が鏡子から受けた恩義の真相だった。
だが、その鏡子が祈子を憎む理由はまだ分からない。かつて暴力を憎んだはずの鏡子が、なぜ今、祈子に非道な暴力を向けるのか。ふと祈子は、花子が何かを隠しているのに気付く。花子はその懐に鏡子からの果たし状を持っていたのだ。祈子は、鏡子とは争わないという信也との約束を守って、その場は自重する。しかし、鏡子の憎しみの理由は父の事件と関係があるのではないかと思い当たった祈子は、翌朝、母や信也の制止を振り切って鏡子との決闘の場所へ向かった。
富士の裾野にやって来た祈子。待ち構えていた鏡子に祈子は、私が勝ったらなぜ私を憎むのかその理由を聞かせて欲しいと条件を出した。「・・・その心配なら無用のことだよ。お前の死に際にたっぷりと話をしてやるつもりだからな!」そう鏡子が言って、戦いの火蓋が切られた。激しく交錯し火花を散らす二人の5番アイアン。勝負は次第に祈子が優勢となった。鏡子の5番アイアンのヘッドを叩き折った祈子は、彼女を追い詰める。拮抗する中、祈子が鏡子に問うた。憎しみの理由は、父の事件に関係があるのではないかと。鏡子が遂に口を開いた。
「私の本名は丸元鏡子!・・・私はお前の父親に殺された丸元利一郎の娘さ!」
吐き捨てるように言って祈子に迫る鏡子だが、再び祈子の前に劣勢となってしまう。しかし、真相が判明した今、祈子はそれ以上鏡子と戦う気は無かった。「鏡子、私のお父さんのことで話があるんだ。お願い、私の話を聞いて!」祈子が叫んだその時、二人の対決を監視していた野沢剣二(萩原流行)の車が二人の間に割って入り、倒れていた鏡子を車内に押し込んで走り去った。
一人残された祈子のもとへ、信也が現れた。祈子は誓いを破ったことを信也に詫び、そして、鏡子が丸元利一郎の娘であることを彼に伝えた。つまり、父の無実を明らかに出来れば、鏡子の誤解は解けるはずだ。これからの祈子の戦いはゴルフの戦いになる。祈子は信也の勧めに従い、プロゴルファー養成所に入ることを決意した。祈子の胸の中には、ゴルフに対する情熱が甦り、炎となって燃えていたのである。
ミニガイド
神島祈子は今、女子プロゴルファー養成所でプロへの道を目指し、過酷な日々を送っています。科学的なデータに則ったカリキュラム、そして強靭な肉体を造り出すための特訓。その辛さに耐え、ただ一つの頂点を目指すライバル。元レディースブラックの頭だった大崎冴子、そして丸元亜矢子さん。でも私は負けない!次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
冒頭、傷心の祈子が海を眺めて呟く。「海・・・。嫌いだよ、お前なんて・・・!」。何か唐突な感じです。
花子が隠し持っていた鏡子からの果たし状。表書きに「果たし状」と大きく書かれているのに、それを手に取ってから「これは・・・果たし状じゃないか!」と改めて驚いてみせる祈子(笑)。
鏡子の果たし状を受け取った日の夜、ベッドの中の祈子は鏡子の夢にうなされる。棒術使いのように5番アイアンをブンブン振り回して祈子を挑発する鏡子のイメージ映像が強烈!
鏡子の挑戦を受けることを決意した祈子は、ベッドの下にしまってあった5番アイアンを取り出し、ササッと着替えてこっそり出発しようとする。今回の衣装、白いジャンパーの背中に黒い生地が張り付けてあり、そこには「Rei」の文字と共に5番アイアンを装着する金具が固定されている。何だか急ごしらえという感じ。玄関先で母に見つかり、二階から降りてきた信也にも止められるが、祈子は信也の腹にパンチをお見舞いして強引に出発します。信也は「あすか」で寝泊りしていたのか??
祈子との決闘に割って入った剣二の車の中で、鏡子は「余計な真似するんじゃないよ!」と息巻いているが、剣二は例のクールな口調で鏡子に言う。「鏡子、お前には祈子は倒せんぞ・・・お前ほどの悪じゃ祈子の光は消せんということだ」。このシーンを含め、今回は随所で「乳姉妹」のBGM?が流れました(音楽担当は同じ菊池俊輔氏)。
◆第14話「女4人 地獄の戦場」
ストーリー
祈子(安永亜衣)は信也(風見慎吾)に付き添われて、御殿場にある星雲女子プロゴルファー養成所に入った。信也はゴルフ場で仕事を紹介してもらい、住み込みで働くことになった。だが、祈子を執念深く付け狙う野沢剣二(萩原流行)が、養成所にまで姿を見せる。祈子と信也の前には早くも暗雲が立ち込めていた。
祈子のルームメイトは、元レディースブラックの大崎冴子(大沢逸美)であった。冴子は一週間前に鑑別所を出て、高倉道夫(国広富之)の紹介でここに入ったのだと言う。冴子にとってはプロゴルファーになることが目的ではなく、祈子をゴルフで打ち負かすことだけが目的だった。冴子は祈子に、負けた方はゴルフを捨てるという条件の勝負を挑む。そこへ亜矢子(生田智子)も現れ、彼女は、負けた方が信也をあきらめるという条件で祈子に勝負を挑む。二人に詰め寄られ、祈子はプロテストの日に決着をつけるということで、それぞれの勝負を受けることになってしまった。
しばらく経ったある日、野上家。静子(久我美子)はすっかり酒に溺れていた。信也が祈子と養成所に行ってしまったことに大きなショックを受けていたのだ。野上家の崩壊を危惧する敬太郎(中条静夫)は養成所の祈子を訪れ、信也を諦めてくれと頭を下げる。信也が亜矢子と結婚すれば野上家は救われる、自分の望みを聞いてくれれば、徹を家族の一員として迎えてもよいと言う敬太郎だが、祈子は受け入れることはできなかった。敬太郎は次に信也を訪ね、直接彼にも頭を下げた。静子の荒んだ状況を聞いて心を痛める信也。そんな信也と敬太郎のやり取りを見て、祈子も居たたまれなかった。
これ以上、愛する信也を苦しめたくないという思いから、祈子は養成所を出る覚悟を固めた。夜中、自室を抜け出し一人で最後の練習をしていた祈子の前に、亜矢子と冴子がやって来た。明朝ここを出ると二人に告げる祈子。亜矢子と冴子は反発するが、彼女らを振り切って祈子がその場を後にしようとした時、ドアが開いた。そして姿を現したのは、丸元鏡子(土家里織)であった。
「祈子、逃げ出そうったってそうは行かないよ。私は地の果てまでもお前を追って行くからね!」
祈子を鋭く見据えて言い放つと、鏡子は続いて亜矢子を睨み付けた。
「亜矢子、久しぶりだね。私はお前にも容赦しないよ。お前がお嬢さんぶって澄ましていられるのも、お前の両親が私の財産を乗っ取ったからだ!」
亜矢子の髪を引っ掴んで振り回す鏡子。祈子たちの間に戦慄が走る。一旦は信也の幸せを願って養成所から姿を消そうと決意した祈子であったが、鏡子の突然の出現がその航路を変えてしまった。ゴルフに対するひたむきな思いを胸に船出した祈子は、たちまちにして嵐の海に投げ出されていたのである。
ミニガイド
なし
MEMO
祈子が養成所に出発する日、見送りに出ている母・保子(音無美紀子)と元北斗七星会の親衛隊たち。なぜか順子(白島靖代)だけいない・・・。
丸元物産から取引を停止され、窮地に立たされている野上敬太郎。その日、社用車でなく自分で歩いて帰る途中、大学受験予備校(代ゼミ)を見上げている徹の姿が目に入る。徹はとあるバーへ入って行った。敬太郎もそこへ入り、徹に、本当は勉強がしたいのではないか、と話し掛けるが、徹は敬太郎の言うことには耳を貸さない。実はそこはぼったくりバーで、徹は水割り一杯に一万八千円を吹っかけられる。「何?ボる気かバカヤロー!人を見ろ!」と妙にリアルな口調で吐き捨てると、店内で大立ち回り。その後、なぜか無事に帰宅できる敬太郎。ただで済んだとは思えないが・・・。
養成所での一コマ、竹ぼうきでスイングの練習をしている祈子たち。そう言えば祈子は鑑別所に入っていた時にも同じことをやっていました。
養成所に乗り込んできた鏡子は亜矢子の髪を引っ掴んで振り回すが、隣にいた冴子は見てるだけで助けようとしない。もっとも、冴子は鏡子とは初対面なので、「誰だコイツ?」と思うのも無理ないですが・・・。一方、祈子も鏡子にガンを飛ばしているだけで、亜矢子を助けません(あるいは一歩も動けなかったのか)。
鏡子をプロゴルファー養成所に送り込んだのは野沢剣二の策略であった。祈子たちの間で展開されているであろう修羅場を思い描いてか、養成所の外でほくそ笑んでいる剣二。「祈子、お前に格好の毒を投げ込んでやったぜ。・・・まあプロテストまで辿り着くかどうか、頑張ってみるんだな」。ところで、鏡子の入校手続なんかは剣二がやってあげたんでしょうか?
◆第15話「恋捨て記念日」
ストーリー
鏡子(土家里織)の出現から一夜明けた。亜矢子(生田智子)は祈子(安永亜衣)に、自分たちとの勝負は別として、ここを出るなら早い方がいいと忠告する。丸元家では、鏡子は悪魔の子と呼ばれていたという。亜矢子がそんな話をしているところへ鏡子が現れ、自分のことで余計な事を喋ろうとしている亜矢子を手酷く痛めつけた。一旦は養成所を出ようとしていた祈子だったが、鏡子の脅しに屈することはできず、養成所に留まることを決意する。
養成所での練習の合間、祈子は鏡子に、父・神島友平は丸元利一郎殺しの犯人ではないと訴えるが、鏡子は信じようとしない。鏡子は自分の辿って来た道を祈子に話し始めた。鏡子が父・利一郎の死を知ったのは、彼女が少年刑務所にいる時だった。自分を愛してくれた唯一の肉親である父を殺した犯人・神島友平に、鏡子はそれこそ少刑を脱獄して復讐するつもりでいたが、友平は自殺。憎しみをぶつける相手がいなくなり、鏡子は生ける屍同然になってしまった。それからしばらく経って、神島友平の娘が神奈川県最大の非行グループの会長になって暴れ回っていると聞いて、鏡子の血は燃えた。その娘に復讐することだけを考えて鏡子は模範囚となり、古武道を知る教官から、血の滲むような特訓も受けたのである。そんな道を歩んできた鏡子に、祈子の言葉は届かなかった。
その頃、野上家。敬太郎(中条静夫)の会社は丸元賢三(長門裕之)からの圧力で八方塞がりの状況にあった。亜矢子と結婚して、自分たちを助けて欲しいと信也を説得する敬太郎だが、信也は、一生ずっと丸元社長の顔色を伺ってまで社長に留まりたいのかと敬太郎に反発する。だが、学閥も閨閥も無い身から社長に登りつめた敬太郎には、社長の椅子は失うことの出来ない夢であった。ちょうどそこへ帰って来た静子は、友人である丸元律子(岩本多代)からの助言もあり、もう一度自分で信也を説得することを考えていた。もちろんそれは敬太郎のためではなく、信也のためにである。
翌日、静子は信也に、富士山を見に御殿場へ行きたいと言い出した。本音は養成所の祈子と亜矢子をもう一度見てみたいということだったが、信也は母の望み通り一緒に車で出かけた。その頃、野沢剣二(萩原流行)から「祈子を信也から奪って来い」と焚き付けられていた徹(沢向要士)も、バイクで御殿場に向っていた。
その日、養成所の訓練生たちは、20kmのマラソンに出ていた。マラソンの列が通りかかった所で、信也は車を停める。静子は、祈子と自分のどちらが大事なのかと信也に問うが、信也には答えられない。信也が祈子に声をかけようと車から離れた隙に、静子は霧深い樹海へと姿を消してしまった。走っていた祈子も異変に気付き、信也と一緒に静子を探しに向かう。亜矢子、冴子、鏡子も彼らを追った。そんな頃、付近へ来ていた徹は冴子から状況を聞き、祈子を追って樹海の奥へ入って行った。
やがて祈子は、倒れている静子を発見した。信也を引き止めることが出来ず絶望している静子の姿を見て、祈子の口から突然、思いがけない言葉が飛び出した。子離れできない親なんて最低だ、こんなエゴイストな姑がいたら信也さんと結婚しても不幸になるのが目に見えている、などと祈子は暴言を吐く。信也もそこへやって来たが、祈子は構わず続けた。「安心するといいわ。信也さんなんてこっちから振ってやるから!」・・・もちろんそれが祈子の本意でないことは信也にも分かっていたが、祈子はこうでも言って自分が信也と離れることを静子に伝えなければ、信也も静子も救えないと考えたのだ。
二人の許から走り去った祈子は、木陰で堰を切ったように泣き崩れた。祈子には信也への変わらぬ思いが溢れていた。そんな様子を目の当たりにしてしまった徹は、祈子の前に姿を現すことはできなかった。
「私は祈子を許さない。許さない・・・!」静子は何度もそう繰り返しながら、信也に付き添われて車に戻った。走り去る信也の車を見つめて、祈子は心の中で言った。「信也さん、静子おばさまを安心させてあげて。私は一人で生きていけます。一人で・・・」。祈子はこれ以上信也が苦しむ姿を見たくなかった。信也との別れを決意することは胸を引き裂かれるほど苦しかったが、静子に辛く当たってみせたことに後悔は無かった。祈子はたった一人で荒海に漕ぎ出す覚悟をしていたのである。
ミニガイド
神島祈子は今、ギャンブルにのめり込んでしまった徹兄さんの切ない気持ちを思っています。しかし、悪魔の使いが、私たち兄妹を破滅の道へと導こうとしているのです。徹兄さんの命と引き換えに、ゴルフマッチの挑戦を受けなければならない祈子。プロゴルファーへの道のりに、また新たな障害が立ち塞がろうとしています。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
ドライバーショットの練習中、鏡子は祈子に「150ヤードの標識を見ててごらん」と言って、ボールをショットし、標識に命中させてみせる。「あれがお前の胸の傷跡さ。私の打球がいつもお前を狙っていることを肝に銘じておくんだね」。それに対抗して、祈子もボールを置いてショット。祈子が放った弾丸ライナーが命中して標識は爆発四散、吹き飛んでしまう。そんな無茶な・・・。
丸元家のお手伝いさん・冬子(松井紀美江)は、野沢剣二の妹であった。彼らは丸元賢三から大きな恩義を受けていたのである。ちなみに、徹が信也から祈子を奪ってくれれば、彼らにとって都合が良いらしい。なお剣二は、鏡子が養成所に入ったことについては、亜矢子が入校していることもあり、賢三にしばらく伏せておくことにする。
20kmマラソンの途中、鏡子が祈子に、「泥棒猫(←注・亜矢子のこと)の婚約者を奪おうなんて、お前も泥棒猫だよ」と悪態をつく。祈子は相手にしない。「・・・図星を付かれて返事も出来ないようだね。信也ってそんなにいい男かい!」と祈子を煽る鏡子。「信也ってそんなにいい男かい」・・・私も祈子と亜矢子さんに小一時間問い詰めたい。
マラソンのシーンでは、祈子・鏡子・亜矢子・冴子の身長差が良く分かります。ちなみに背の高さは、大沢逸美さん(168cm)>生田智子さん(165cm)>安永亜衣さん(160cm)>土家里織さん(156cm)となります(データは「日本タレント名鑑」より)。初登場の時はそれほど気になりませんでしたが、最近の鏡子はとても小柄で可愛い。祈子にガンを飛ばしていても、実は見上げていたりします。
樹海で静子の探索中、かなり派手に斜面を転がり落ちていった祈子。そこへ岩を落とそうとしていた鏡子だったが、背後で声がしたので振り向いたら、次の瞬間に祈子の姿はなく、鏡子は舌打ちする。鏡子は亜矢子に狙いを変え、彼女を樹海の奥へ引っ張って行った。亜矢子を一人置き去りにするつもりである。そこへ、かすり傷一つ無い祈子が現れ、鏡子を追い払う。亜矢子は祈子に「もう嫌、おうちへ帰りたい・・・!」と弱音を吐く。祈子は「ここで挫けたら、丸元亜矢子のプライドはどうなるの!私は鏡子の脅しになんて負けないわ!」と亜矢子を励まします。
◆第16話「明日なき闘い」
ストーリー
信也(風見慎吾)の幸せを願い、祈子(安永亜衣)は心を鬼にして信也の母・静子(久我美子)を罵倒してみせたが、信也には祈子の本当の気持ちがよく分かっていた。祈子を人生の同志と考えている信也にとって、彼女のために苦しむことは不幸ではなかった。信也は再び養成所の祈子を訪ね、もっと僕を信じろ、僕一人の幸せを願うなと祈子に言い聞かせる。
養成所に、亜矢子(生田智子)の両親である丸元賢三(長門裕之)と律子(岩本多代)が訪ねて来た。亜矢子に届け物をして帰ろうとした時、養成所内に鏡子(土家里織)がいるのを知って、丸元夫婦は驚愕する。鏡子は、自分を悪し様に罵る丸元夫婦に、父・丸元利一郎を巡るいきさつをぶちまけた。利一郎の家や株券は税金対策として丸元物産の名義になっていたが、利一郎が神島友平に殺された当時、鏡子がまだ小娘だったのをいいことに、賢三がその財産を乗っ取ったというのだ。そして、賢三は丸元物産の社長の椅子を狙って、利一郎を失脚させようとしていたことも鏡子の口から明かされる。居合わせた祈子と信也もその新事実を知るところとなった。鏡子は賢三たちに言った。「祈子に恨みを晴らしたら、次はお前たちだ。お前たちの家に乗り込んで、財産は全て返してもらうからな。首を洗って待ってな!」
その日、華粋会の野沢剣二(萩原流行)は、鏡子の養成所入りを報告しなかったことを賢三に厳しく叱責される。憤激する賢三は剣二に、一刻も早く祈子と鏡子を始末しろと命令。剣二は、祈子の兄・徹(沢向要士)を利用して祈子から片付けようと企んだ。その頃、徹はルーレット賭博にのめり込んで自堕落な毎日を送っていたが、その借金が膨れ上がり、一億二千万円にも達していた。剣二は借金の精算を迫り、無理なら死を選ぶ他ないと徹を脅迫。そして、唯一彼が助かる手立ては、祈子が華粋会の選んだプロとの賭けゴルフに勝つことだと言う。祈子に迷惑が及ぶことを恐れる徹は、自分の父が扶桑工業社長の野上敬太郎(中条静夫)であると明かし、敬太郎に金を出させると剣二に申し出る。徹と剣二たちは野上家へ乗り込むが、敬太郎は彼らの要求を拒んだ。
翌日、養成所の祈子の前に剣二が現れ、徹の命が華粋会の手に預けられていることを伝えた。徹の命を賭けたゴルフマッチに祈子が勝てば借金は帳消しにできるが、負ければ徹は自ら死を選ぶことになるという。祈子のプロゴルファーへの道に、またも暗雲が立ち込めた。彼らの話を、徹に想いを寄せる冴子(大沢逸美)も聞いており、彼女は徹を助けて欲しいと祈子に懇願する。ゴルフマッチのスタートは明朝8時。徹を見殺しにはできない祈子は、父の墓参りという表向きの理由でその日の休暇願を出した。
祈子が養成所を出ると、そこには信也が待っていた。「・・・君のキャディーを務めるのは僕しかいないよ。さあ、行こうか」。徹の命は今や風前の灯火である。徹の無事を祈る保子、優子、敬太郎らの願いと共に、祈子と信也は勝負の場所へと向かった。
ミニガイド
神島祈子は今、フェアウェイの彼方に徹兄さんの命を見つめています。元プロゴルファー・勝田キョウスケとのゴルフマッチ。9ホールに渡るこの勝負に、兄さんと私の魂を、祈子は神に捧げて戦います。絶望から希望へ、悲しみから喜びへ、闇から光へ。神よ、祈子を導いてください。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
冒頭、パットの練習をしている養成所の面々。祈子のパットしたボールに横からコツンとボールをぶつけて邪魔をする鏡子がお茶目である。
華粋会とのゴルフマッチに赴くため、コーチ主任・黒木(綿引勝彦)の所へ休暇願を出しに行った祈子。表向きの休暇理由として「父の墓参り」と書いていたが、それを見た黒木が、神島友平の思い出を祈子に語った。黒木はプロテストに16回も失敗し続けていたが、17回目に友平から的確なアドバイスをもらって、38歳にしてようやく合格することが出来た。そして友平には今も感謝しているという。「友平さんはどんな苦境に立っても、心乱すことなく果敢なゴルフをする人でした」という黒木の言葉を励みにして、祈子は華粋会との勝負へと向かいます。
◆第17話「命賭けた闇ゴルフ」
ストーリー
徹(沢向要士)の命を賭けた、祈子(安永亜衣)と華粋会とのゴルフマッチ。その場所には、徹を想う冴子(大沢逸美)も密かに来ていた。祈子の相手は、勝田キョウスケ(穂高稔)。10年前に全日本オープンで優勝した元プロゴルファーである。無類のギャンブル好きが祟ってゴルフ界を追放された男だが、その腕は当時のままだ。勝負はハーフ、9ホール。各ホールでスコアが上回った方に勝ち点1を与えるというルールである。
第1、第2ホールと勝田が勝ち点を挙げ、実力差を目の当たりにして弱気になる祈子だったが、ギャンブルで身を持ち崩した勝田はいつかミスをする、という信也(風見慎吾)のアドバイスで、バーディチャンスが来るまで確実にパーをキープする作戦を取る。第3、第4ホールは両者ドロー。第5ホールで勝田がOBを出し、祈子に初の勝ち点が付いた。第6ホール、幸運なチップインバーディで祈子に勝ち点。2対2で迎えた第7、第8ホールは両者ドロー。勝負は第9ホールに持ち越された。その時、徹の父親である野上敬太郎(中条静夫)が徹のために金を作って祈子たちの前に現れ、勝負を中止するよう求めたが、既に賽は投げられた、と野沢剣二(萩原流行)はその金を突っぱねた。
第9ホール、勝利への焦りからか、祈子のティーショットは、林の中に入ってしまった。運悪くボールは木の根元に落ちており、満足にバックスイングもできない。フェアウェイに戻すどころか、ボールを動かすだけで精一杯の位置だ。諦めかけた祈子に、昨夜、養成所を出る時に聞いた黒木(綿引勝彦)の言葉が甦った。「友平さんは、どんな苦境に立っても心乱すことなく、果敢なゴルフをする人でした」。祈子はクラブを思い切って短く持ってスイングしボールをフェアウェイに戻すことに成功。祈子と勝田はそれぞれ3オンでグリーンの端へ乗せた。勝負はこのパットで決まる。勝田は2パットだったが、祈子は見事に1パットでカップに沈め、祈子の勝利となった。
徹は解放された。そのとき、冴子が、一部始終を陰でずっと見ていた不審な覆面の男にナイフを突きつけて祈子たちの前に突き出した。祈子にはその男の正体が分かっていた。祈子が事件の真相を知ろうとするのを妨げているその男は、丸元賢三(長門裕之)であった。祈子は、必ず父の無実を証明してみせると賢三に宣言して、その場を引き上げた。
ゴルフ場を後にする際、徹に父として詫びる敬太郎。自分の保身のために徹を神島家に預けたことを認め、父親としての責任をこれから果たさせて欲しいという敬太郎だが、徹もにわかには承知できない。祈子は徹と二人だけで話をすることにした。お兄ちゃんは自分の不幸に甘えている、と祈子に指摘される徹。彼自身もそのことは良く分かっていた。だが、徹は祈子への想いを抑えることができず、自分のために信也と別れてくれと祈子に求める。そんな様子を見かねた冴子が、徹の甘えを厳しく非難した。冴子は、もし祈子が負けていたら、徹を助けるために覆面の男を殺して自分も死ぬ覚悟をしていたと言う。「お兄ちゃんを本当に愛しているのは、本当に必要としているのは冴子さんよ。分かってあげて」という祈子の言葉に、徹は涙を浮かべてその場を後にする。お兄ちゃんについててあげて、という祈子の願いに冴子は、養成所には戻らない決心で徹の後を追った。
その夜、養成所に帰った祈子が自分の部屋の明かりをつけると、そこで待っていたのは鏡子(土家里織)だった。「今夜はゆっくり休ませてあげる。だけど明日からは容赦しないからね」と言う鏡子。そんな折、賢三と律子(岩本多代)が娘の亜矢子(生田智子)を連れ戻しに養成所に乗り込んできた。嫌がる亜矢子を見て、祈子も止めに入る。殺人者の娘と、義理の母を殺した女、そんな恐ろしい女が二人もいるところに大事な娘を置いておけるか、と賢三が口走ったことから、祈子は鏡子の過去を初めて知ることとなった。その場にいた鏡子が、自らの口から真相を明かした。鏡子は中学2年の時、継母をベランダから突き落として殺したというのだ。
鏡子の秘密の一端を知った祈子は、鏡子の背負っている運命の過酷さを思って慄然とするものがあった。賢三の悪しき意図に嵌って、祈子は胸の内で震えながらも、生死を賭した鏡子との戦いを予感していたのである。
ミニガイド
神島祈子は今、束の間の安らぎも無いままに、再び司鏡子の鋭い挑戦を受けようとしています。いまだベールに隠された鏡子の必殺技、それはいつどんな時に繰り出されるのか。不安な日々の中で、ショットに乱れが生じる祈子。そして、運命の時。鏡子の刃は遂に花子の頭上に襲い掛かってきたのです。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
冒頭、徹は華粋会の物置部屋らしき所に軟禁されていた。自分の借金のために祈子が賭けゴルフの挑戦を受けねばならなくなったことを知り、徹は逡巡する。これ以上祈子に迷惑をかけられない、俺さえ死ねば・・・。ちょうど天井からロープが首吊り用としか思えない形にぶら下がっており、踏み台に持ってこいの荷箱が足元にある(笑)。首を吊ろうとする徹の姿は、こう言っては何ですが、コントみたいに見えました。もちろん、剣二に発見されて止められ、徹は手酷く殴られます。
祈子と勝田の勝負で、ホールごとに勝敗のアナウンスをする剣二。勝田が勝った時は嬉々としているが、両者ドローだったりすると露骨に不機嫌そうな顔(と口調)。実に表情豊かで分かりやすいです。
野沢剣二・野沢冬子(松井紀美江)の兄妹は、親に死なれて餓死寸前の所を丸元賢三に助けられ、高校まで出してもらった恩があるというエピソードが紹介されます。
祈子の実家「あすか」で働いていた室田花子(松居直美)は、祈子の母・保子(音無美紀子)に、店を辞めたいと申し出る。歌手になる夢を叶えたいから、と花子は言うが、彼女の足は祈子のいる養成所に向かっていた。鏡子との因縁なのだろうか?
◆第18話「友よ安らかに眠れ」
ストーリー
養成所ではその日、プロゴルファーの高倉道夫(国広富之)が臨時コーチとして招かれた。高倉と一緒にラウンドする生徒として、祈子(安永亜衣)と鏡子(土家里織)も選ばれる。そのゴルフコースには、鏡子が祈子に何か仕掛けるのではないかと恐れる花子(松居直美)も来ており、信也(風見慎吾)と共にその行動を見守っていた。
第7ホール、ティーショットでフェアウェイに乗せた祈子に続いて、鏡子がショットしたボールは大きく右へ逸れて林の中に入った。二打目、鏡子が放った鋭いボールは木に跳ね返って、フェアウェイに立っていた祈子の腹部を直撃、祈子は倒れ込んだ。だが、まもなく意識を取り戻した祈子は咄嗟に、自分がぼんやりしていたのがいけなかった、と鏡子の意図的な曲打ちであることには触れず、痛みを押してプレー続行を申し出た。祈子はその時、鏡子への怒りよりも、一流プロゴルファーである高倉のコーチを受けたい一心だったのである。
最後のホールを終えた時、祈子は再び腹部の激痛に倒れ、信也と花子によって病院へ運ばれた。ホールに残された高倉と鏡子。高倉は鏡子が丸元利一郎の娘であることを知っており、祈子を恨むのでは筋違いだと言い聞かせるが、鏡子は考えを曲げない。鏡子は、利一郎殺しの犯人は神島友平で間違いないか、と高倉に念押ししたが、高倉はその問いには「間違いない」と答えた。
祈子が入院している病室。目を覚ました祈子は信也に、鏡子は宣言どおり自分を狙い打ちにしたのだと打ち明ける。しかし、ゴルフのコーチを受けることを第一に考え、鏡子の挑発に乗らなかった祈子を、信也は褒めた。その頃、一緒に見舞いに来ていた花子の帰りが遅いため、鏡子の所へ行ったのではないかと直感した信也は、彼女の後を追う。
花子は、養成所内の倉庫に鏡子を呼び出していた。自分の必死の願いも届かず、ついに祈子に刃を向けた鏡子に、花子は自分が身代わりになると土下座して懇願するが、鏡子はあくまでも祈子への復讐を止めようとはせず、花子の頼みを聞き入れない。そこへ信也が現れ、友平が犯人ではないと鏡子に訴えるが、鏡子は聞く耳を持たず、逆上して信也の腕をゴルフクラブで組み伏せ、その腕をへし折ってしまう。
三日後、退院した祈子が信也の宿舎を訪れると、そこには腕を折られた信也の痛ましい姿があった。信也は、仕事中に崖から落ちてケガをした、と平静を装うが、祈子は一緒にいた花子を問い詰め、鏡子の仕業であることを知る。祈子は、鏡子の挑発には決して乗らないと信也に約束していたが、自分のことなら何とか耐えられても、信也を傷つけられたとあっては、もはや鏡子を許すことは出来なかった。
その日の夕暮れ、ティーショットの練習をしている鏡子の前に、祈子が姿を見せた。「・・・あんたとは、どうしても体で決着を付けなければならないようだね」。祈子は鏡子に宣戦布告した。明朝6時、場所は例の樹海。鏡子も受けて立った。
翌朝、決戦の場所で祈子を待ち構えていた鏡子の前に最初に現れたのは、花子だった。花子はナイフを握り締め、鏡子に突きつけて言った。「あれほど祈子と争わないでって言ったのに・・・こうなったら、あんたを殺るしかないじゃないか・・・!」。鏡子に切り掛かる花子。そこへやって来た祈子は鏡子と花子の争いを止めようとするが、二人がもみ合う中、花子は崖から転落してしまう。地面に倒れた花子の胸にはナイフが突き刺さっていた。
瀕死の花子に寄り添う祈子と鏡子。花子は鏡子に、最後の頼みとして「祈子と友達になって・・・」と声を振り絞って言った。「わかった・・・祈子と争わないで、話し合ってみるよ・・・。友達になる・・・」鏡子は涙を浮かべ花子に誓った。花子は続いて祈子に、必ず父の汚名を晴らしプロゴルファーになって、と言い残し息を引き取った。花子の名を呼ぶ祈子と鏡子の悲痛な叫びが樹海に響き渡った。
ミニガイド
神島祈子は今、友人・花子の優しい心を思っています。自分の命をかけて、私と鏡子との間に刻まれた深い溝を、温かい心で埋め尽くしてくれた花子。彼女へのレクイエムを胸に、祈子は再び真実の道を歩みます。しかし、その行く手に立ち塞がる目に見えない敵は、新たな刺客を送り込んでくるのです。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
樹海の中をずんずん歩いているジャージ姿の鏡子。野沢剣二(萩原流行)に呼び出されたのだ。いつ祈子を攻めるのかと問う剣二に鏡子は、自分にはゴルフを利用した殺し技がある、そのチャンスを狙っているのだと答える。剣二は、祈子は憎むべき神島友平の娘だ、と鏡子を煽るだけ煽って去って行った。その後、花子がその場に姿を見せる。祈子のお父さんは犯人じゃない、祈子はその証拠を必死になって探してるんだ、と訴える花子だが、鏡子は信じようとしない。
鏡子「祈子のおためごかしを、お花は信じてるのかい!」
花子「おためごかしじゃない!祈子と話し合ってよ、きっと友達になれる!」
・・・このドラマ、「おためごかし」という言葉が良く登場しますね。
両親によって養成所から家に連れ戻されていた亜矢子(生田智子)は、隙を見て養成所に戻ろうしていたが、お手伝いさんの冬子(松井紀美江)に発見され止められる。祈子と鏡子はいずれ殺し合いをする、その巻き添えにならないよう、旦那様と奥様はお嬢様を連れ戻したのです、と亜矢子に言い聞かせる冬子。どう転んでも祈子と鏡子に生きる道はない、それが亜矢子の父・賢三(長門裕之)の意志だというのだ。その真相を掴むべく、亜矢子はお掃除中の冬子の後頭部を殴りつけ(!)、自宅を脱出し養成所へ向かいます。
病院を退院した祈子は、鏡子と初めて対決した時と同じ、特大サイズの青いジャケットを羽織っている。これ似合ってないです(笑)。また、鏡子との対決の場所に向かう時は、富士の裾野での決戦でも着ていた白いジャンパー姿で、背中には5番アイアンを装着する例の黒い金具が付いている。養成所にも持って来ていたのか・・・。
◆第19話「継母の陰謀」
ストーリー
富士樹海での室田花子(松居直美)の事故死は、新聞でも大きく報じられた。記事の中で、3年前のゴルフ場での丸元利一郎撲殺事件との関連や、神島友平の無実を訴える祈子(安永亜衣)の姿が紹介されていたことから、丸元律子(岩本多代)は苛立ちを募らせる。祈子の動きを黙って見過ごせない律子は、失敗続きの野沢剣二(萩原流行)に見切りを付け、外国出張中の賢三(長門裕之)にも無断で、剣二の妹・冬子(松井紀美江)に祈子を始末するよう命じた。
花子の葬儀。鏡子(土家里織)は、花子の遺影に手を合わせた後、彼女との約束どおり、心を開いて自らの過去を祈子たちに語り始めた。・・・丸元物産の社長であった丸元利一郎(佐原健二)の一人娘として生まれた鏡子は、父のすすめで始めたゴルフに非凡な才能を見せ、将来はプロゴルファーになることを夢見ていた。その頃の鏡子は父が大好きで、また人を疑うことなど知らない純粋な少女だった。彼女が中学2年の時、当時の丸元物産専務で永尾姓を名乗っていた丸元賢三が、彼の秘書をしている今井ミキ(沢井孝子)という女を連れて自宅に現れた。その女が利一郎の再婚相手であった。
ミキは利一郎の前では大人しい妻を演じていたが、鏡子には厳しく当たるエキセントリックな女だった。鏡子にとって許せなかったのは、彼女の亡き母の形見である衣服や宝石などをミキがさも当然のように自分の物にしていることだった。ある日、鏡子は学校をさぼって家に戻ってきたところ、部屋で賢三とミキが密談しているのを目撃。彼らが利一郎を丸元物産社長の座から引き摺り下ろそうと画策していたことを知る。
それからしばらく経ったある日、ゴルフ場を使って利一郎の誕生パーティーが催された。そこではアトラクションとして、ミキの知人でもあるプロゴルファーの時田真介(石橋正次)がゴルフの曲打ちを披露することになっていた。時田がボールを打つ直前、鏡子は父の危機を本能的に察知。咄嗟に父の前に飛び出した鏡子の胸を時田のボールが直撃し、鏡子は倒れる。かつて鏡子が祈子の前で見せた胸の傷跡はその時のものだったのだ。
鏡子は奇跡的に命を取り留めたが、時田のボールが明らかに父の命を狙っていたと知った彼女は、ミキを許すことが出来なかった。退院後、不良少女に姿を変えた鏡子は、熟慮の上、罪を全て背負う覚悟で、ミキを殺そうと決意する。だが、現実にミキをベランダから突き落としてしまった瞬間、鏡子は人を殺す恐怖におののき絶叫した。鏡子がそれまで温めてきた夢や希望は粉々に砕け散り、彼女は全く別の人間になってしまった。その後の鏡子は、かつて花子が話したように、少年院へ送られ、やがて少年刑務所で服役することになる。・・・
続いて、今度は祈子が自分の掴んだ事実を鏡子に話した。時田真介が3年前の事件の真相を知っていたこと、そして彼が何者かに刺されて息絶える間際、神島友平は無実だと確かに言い残したこと。鏡子も祈子の話を信じて、事件のことをもう一度洗い直す意志を固める。葬儀の後、初七日が済むまでは花子の傍にいるつもり、という鏡子は、プロゴルファーになる夢を祈子に託して彼女を養成所に送り出した。
養成所に戻り、自室に入った祈子。一息ついてクローゼットを開けると、その中に潜んでいた謎の女が飛び出し、祈子にナイフを突きつけた。女の正体は、丸元律子の命を受けた野沢冬子であった。冬子は祈子をグラウンドの倉庫へ放り込んで気絶させ、ガソリンを撒く。冬子が火の付いたマッチを祈子に放った時、意識を取り戻した祈子は間一髪これをかわしたが、二人のもみ合いの中、周りは炎に包まれる。祈子が必死に冬子を振り払った時、炎が冬子の体に燃え移り、祈子は咄嗟にマットを被せて彼女の火を消し止めた。重傷を負った冬子を担いで祈子が脱出しようとすると、ドアの外に野沢剣二の姿が!剣二は冬子の姿を見て一瞬躊躇するも、祈子を阻止すべくドアに鍵をかけて二人を中に閉じ込めてしまう。
祈子は必死に体当たりしてドアを破り、冬子を抱えて脱出、剣二の手を逃れて走り去った。瀕死の冬子に呼びかける剣二だが、死期を悟った冬子は、自ら炎の中に飛び込んで行った。燃え落ちる倉庫を見つめて、剣二は祈子への激しい怒りに体を震わせた。
突然の火災発生に養成所は大騒動となり、もはや祈子たちが養成所に留まることは許されなくなった。直ちに信也は祈子を車に乗せ、立ち塞がる剣二を振り切って養成所を出発する。
信也と祈子は、信也のゴルフ部時代の親友・高木を頼って、彼が勤務する鬼怒川のホテルに向かった。焼け死んだ冬子も、実際には丸元家の犠牲になったのだと思うと祈子は辛かったが、いま目の前に広がる美しい自然は、彼女に新鮮な感動を与えた。束の間の安らぎではあったが、人の好意が嬉しく、なにより信也と共にあることが至上の喜びであったのだ。
ミニガイド
神島祈子は今、数々の忌わしい思い出との訣別のため、日本の秘境・鬼怒川峡谷に身を寄せています。厳しい自然の中、高倉プロの指導を受けて、ひたすらスイングの矯正に打ち込む祈子。仄かに揺れる蝋燭の炎のように、私の未来はか細いものなのでしょうか。その不吉な予感が、大崎冴子の運命を狂わそうとしているのです。次回「プロゴルファー祈子」、お楽しみに!
MEMO
冒頭で律子は、外国出張中の賢三に無断で冬子に祈子抹殺の指令を下すが、冬子が失敗し焼死したという知らせが剣二から入ると、今度は血気にはやる剣二に対して、賢三が戻るまで待って指示を仰げと言う。「祈子は恐ろしい女!」が口癖の律子だが、ずいぶん自分勝手。
鏡子の継母・今井ミキを演じた沢井孝子さんは、東宝女優・沢井桂子さんの実妹です。沢井孝子さんは高校3年時、1967年12月17日に京都祇園会館で開催された、着物姿の美を競う「1968年度第1回『ミス美しい装い』コンテスト」で見事“ミス美しい装い”の栄冠に輝きました。当時のインタビューの中で、かつて東宝ニューフェイスに応募したことがあり、将来は東宝に入社してお姉さんのように女優になりたい、と抱負を述べています。ちなみに、身長162cm、B80・W60・H82とのこと(雑誌『美しい装い』1968年春・夏特集号、1968年3月28日発行)。
#17「命賭けた闇ゴルフ」で紹介された鏡子の回想シーンでは、継母・ミキをベランダから突き落とす鏡子は普段着姿だったが、今回描かれる同じシーンでは例のアイアンお祈もどき不良ルックになっている。しかしこの当時、祈子の方はまだ不良になっていない(祈子が不良化する原因となった父・友平の事件はこれより後)。ということは、5番アイアンを背負ったあの奇抜なファッションの元祖は祈子ではなく鏡子ということになりますが・・・。
◆第20話「夢か?峽谷の特訓」
ストーリー
野沢剣二(萩原流行)の追跡を逃れて鬼怒川峡谷に身を寄せ、ゴルフの練習に打ち込んでいる祈子(安永亜衣)。信也(風見慎吾)と友人の高木(堀光昭)と一緒にホールを回っている。プロテストにトップで合格することを目指す祈子は、現状のスコアでは満足できず、実力が伸び悩んでいることに焦りを隠せなかった。
そんな祈子たちの所へ、徹(沢向要士)と冴子(大沢逸美)が駆けつけた。いつ剣二の手がここまで回るかも知れない、早く立ち去る用意をした方がいい、と徹は忠告する。その時、彼らの前にプロゴルファーの高倉道夫(国広富之)が姿を現した。高倉は、自分を訪ねて来た徹と冴子の会話から、祈子たちが鬼怒川にいることを知ったのだった。祈子は思わず高倉のもとに駆け寄った。「高倉さん、なぜあなたがここにいるのか、そんなことは今の私にはどうでもいいことです。私にゴルフを教えてください!」そう言って頭を下げる祈子に高倉は、「明日の朝6時、龍王峡へ来たまえ」と言い残して去って行った。
祈子たちは、剣二の追跡を逃れるべく、冬寒の原生林に包まれた秘境、龍王峡のロッジに向かった。信也や徹は祈子と一緒に泊まるつもりだったが、祈子は、せめて10日間だけ一人にして欲しいと申し出る。どこまで孤独に耐えられるか、どこまでゴルフを極められるか、自分を限界まで追い詰めて、自分を試してみたいというのである。信也たちはそれを聞き入れ、祈子を残し一旦ホテルに戻ることにする。
翌日から、高倉による特訓が始まった。その日は雪深い谷川のほとりでドライバーショットの練習。高倉は祈子のフォームを見て的確に問題点を指摘する。祈子の場合、全体の力を10とすると、ダウンスイングからインパクトまでに7の力を使ってしまっており、インパクトからフォロースルーに3の力しか使っていない。これでは飛距離が出なくて当然で、これを逆にダウンスイングからインパクトまでを3、インパクトからフォロースルーまでを7としてヘッドスピードを上げること、これが飛距離を伸ばす鉄則であると。その夜、練習を終えてロッジに戻った祈子は、床に置いた蝋燭の炎の真上をスイングして、フォームの矯正に専念する。
翌日は、林の中で曲打ちの特訓。木の跳ね返りを利用したリカバリーショット、片足打ち、片手打ちなど、高倉はその持てる技術を惜しげもなく祈子に伝授する。なぜ敵である私にゴルフの高等技術を教えてくれるのかと尋ねる祈子に、高倉が答えた。「おかしなことを訊くね。君は、私がなぜ鬼怒川にいるか、そんなことはどうでもいいと言った。それで良いじゃないか。君がプロテストを優勝で飾りたいのは知っている。だったら私から技術を盗めばいい」。
数日後の朝。鬼怒川ホテルを嗅ぎ付けた剣二と華粋会は、徹と冴子を拉致し、極寒の山中で徹を痛めつけ祈子の隠れ家を吐かせようとする。徹が殺されると恐れた冴子は、やむなく祈子の居場所を話してしまった。剣二たちは龍王峡へ急行。徹は自分の忠告を無視して祈子の居場所を話した冴子を罵倒し、自ら祈子を助けに行こうとするが、傷だらけの体で満足に動けない。冴子は、徹への罪滅ぼしのために、自ら祈子のもとへ向かうが、途中の雪道で崖から滑落してしまう。
高木から、徹と冴子がさらわれたという知らせを聞いた信也はロッジへ急行。だがそこに祈子の姿は無かった。祈子は高倉との練習場所に来ていたが、その日、高倉はまだ姿を見せなかった。どこからか、高倉の声が響いた。「祈子くん、すぐここを去りたまえ!追っ手が来ているぞ!」。祈子の前に剣二と華粋会の男たちが姿を現すが、その時、高倉の打ったゴルフボールが華粋会の男たちに次々に命中、祈子を助けた。
剣二の追跡を逃れた祈子はやがて信也と合流するが、途中、雪の中に倒れて氷のように冷たくなっている冴子を発見。冴子は薄れ行く意識の中で、祈子にプロゴルファーになる夢を託した。その時、徹が彼らのもとにたどり着いた。徹は冴子を病院へ運ぶことを引き受け、祈子と信也に自分たちに構わず逃げるよう促す。だが、祈子と信也が長い洞穴を抜けたとき、二人の前に剣二が立ち塞がった。
ミニガイド
なし
MEMO
野沢冬子(松井紀美江)の焼死事件を伝える新聞には「女子プロゴルファー養成所に怪事件」「身許不明の女性 物置で焼身自殺」といった見出しが踊っている。本文中には「二十五-六歳の女性の死体・・・」とあるが、ちょっと無理があるような?(ちなみに松井紀美江さんは当時32歳)
凍傷を負って倒れている冴子を発見した祈子と信也のもとへ現れた徹。木の枝を杖にしてヨロヨロと歩いてくる姿はちょっとユーモラスに見えてしまう・・・。
丸元賢三(長門裕之)が愛用しているパソコンはNECのN5200というシリーズの機種らしいです。
龍王峡、祈子の前に姿を現す剣二と華粋会の男たち。すると突如、どこからか放たれたゴルフボールが鋭く木に跳ね返って、華粋会の男たち数人を一気になぎ倒して行く。現実には有り得ないこんなシーンも無理なく見せてしまうテンポの良い演出が光ります。祈子の危機を救った高倉が遠くにすっくと立っている姿、カッコイイ!。だが、高倉は先頭を歩いていた剣二がボールを避けることは計算済みだったのか?
↑の『明星』1988年2月号の記事より一部紹介します。
(安永亜衣インタビュー)
「幼稚園の頃から文章を書くのが好きで、雑誌記者になりたかったんです。その後、新聞記者→脚本家→ん~、お芝居か・・・→書くより、演ったほうが楽しそう→女優さんになろう!!となりまして、一度決めたらあとは目標に向かってまっしぐらの性格なもので・・・へへ」
「小学生までは整理整とん魔人で、部屋はいつも、きちーっとしてたんです。でも中学頃から、A型の血が薄らぎまして、今じゃ、あき巣が入ったみたいな部屋で生活してますっ、あはは」
「私、運動はぜ~んぜんダメなんで・・・もぉ、バスケをやれば味方のゴールにシュートしちゃう、ハードルとべば全部なぎ倒して走っちゃう・・・最低なんです」
(※注・本人はゴルフは当然初めてのため、撮影に入る前に女子プロから2週間の猛特訓を受けた)「球筋が素直でいいって言っていただけました」
「中学、高校と女子高ですから、男の人ってダメなんです。特に顔のイイ人なんて、もう~、全身硬直おこしちゃいまして。だから恋人役の慎吾さんと、目をあわすシーンなんて汗ダラダラ。目が見れないんで耳たぶとか、おでこのシワを見つめてるんです。・・・それに“ぶっ殺すぞ”とかドスきかせながら、内股で走り去っちゃったり・・・どっか女子高ぽいんですよ、私」
・・・その他、「信也(風見慎吾)は本作出演が決まってゴルフを特訓したが、いざ始まったら自分がゴルフをするシーンが一回もなくて愕然とした」「祈子愛用のゴルフクラブは“HONMA”ブランドでワンセット150万円」「剣二アニキ(萩原流行)は、撮影の合間はいつもゴルフ三昧」といったエピソードも。
◆第21話「友情そして勝利」
ストーリー
剣二(萩原流行)の追跡を逃れて必死に走る祈子(安永亜衣)と信也(風見慎吾)。林の中で、再び剣二が二人の前に立ち塞がった。5番アイアンを奪い取り、信也を痛めつける剣二だが、祈子が隙を見て丸太で剣二に一撃を浴びせ、剣二は足を滑らせて崖から転落していった。
危機を脱し、出発しようとする祈子に信也は、剣二を助けに行くと言い出した。今なら命は助かる、と。祈子には理解できなかった。なぜ自分たちを何度も殺そうとした人間を助けるのか。だが信也は言う。どんなに自分が辛い時でも、他人の命を思いやる心を失ってはいけないと。それを聞いた祈子は、傷を負った信也に代わって自ら剣二を助けに谷底に下りていった。信也は一人でふもとの町まで戻ることにする。
剣二は気を失っており、左腕を骨折していたが、祈子が応急手当を施していた。やがて意識を取り戻した剣二は「なぜ俺を助けた!」と祈子を問い詰める。信也さんが助けろと言ったから、と素っ気なく答える祈子だが、知らず知らずのうちに自分がどんなに信也に惚れ込んでいるかを剣二に話していた。人の優しさを純粋に信じている祈子に、剣二も自分の少年時代を祈子に語り始めた。彼の父親はヤクザの下っ端で麻薬中毒、母親は飲み屋で働いていたが、殴り合いの夫婦喧嘩が絶えず、幼い剣二・冬子の兄妹は満足に食事も与えられない毎日だった。ある日、父親が車にはねられて死んだが、その車を運転していたのが丸元賢三(長門裕之)だった。慰謝料を受け取った母親は二人を置いて姿をくらましてしまった。残された剣二たちが餓死寸前になっていた所に、再び賢三が現れ、二人の生活の面倒を見て、高校まで出してくれたというのである。
剣二も他人の好意を受けて生きてきたことを知る祈子だが、剣二は否定する。賢三は決して人間として情けをかけたのではなく、忠実な猟犬に仕立て上げたのだと。そして祈子に警告した。「祈子、俺を助けたことを後悔するぞ。元の体に戻ったら、俺はまたお前を追って走り続ける。後悔したくなかったら今ここで俺を殺せ!」。だが祈子は首を振る。後悔などしない、人間として当然のことをしたのだからと。
夜になり、眠ってしまった祈子。剣二は祈子に焚き火の火を放とうと手を伸ばしたが、実行に移すことは出来なかった。剣二は祈子が毛布代わりにしているジャンパーをかけ直してやると、その場を立ち去った。翌朝、祈子は、引き返して来た信也と合流する。剣二が、眠っている自分を殺そうとはせず去ったこと、剣二の話を聞いて、彼が本当の悪人ではないと感じたことを信也に話す祈子。信也は祈子に言った。「野沢は君の中の光を見ることが出来たのかも知れない。だからきっと・・・」。
横浜へ戻って来た信也と祈子は、警察が3年前の事件の再捜査のために動き始めていることを知るが、そのためには何か決定的な証拠が必要であった。二人は迎えに来た順子(白島靖代)たちと一緒に、鏡子(土家里織)のアジトへ向かった。祈子と信也を迎えた鏡子は、これから面白いものを見せてあげる、と奥へ案内する。鏡子は昨夜、事件の手がかりを探すために丸元賢三の書斎に侵入して家捜ししていたが、その時、賢三が妙にパソコンを隠そうとしていた。あのパソコンには事件に関する重要なデータが入っていると鏡子は睨んだのである。そこで鏡子は大胆不敵にも、賢三のパソコンにハッカーを試みようとしていたのだ。果たしてそこには、事件の真相を解く鍵が隠されていたのである。
ミニガイド
神島祈子は今、暗闇の中に一条の光を見出しています。追い詰められたターゲットが、その全貌を現そうとしている。多くの人々を犠牲にして肥え太った人物の最後の悪あがき。でも、それを皆さんにお見せできるのは、4月13日の水曜日。来週再来週は特別番組のため「プロゴルファー祈子」はお休みです。皆さん、また4月13日にお会いしましょう。
MEMO
ドラマも終盤に近付き、ミニガイドでの祈子の語りにも緊迫感があふれていますが、後半で突然特別番組のお知らせに。「皆さん、また4月13日にお会いしましょう」には意表を付かれました。
高倉道夫(国広富之)の妻は数年前に病死しているが、その治療費や入院費を用立てたのが丸元賢三であった。高倉が賢三の支配下にあるのはその恩があるためである。だが、丸元にとって邪魔な存在である祈子に対してゴルフを教えるなど、高倉の心は変化しつつあった。
賢三の屋敷に忍び込み、3年前の事件の証拠を捜していた鏡子。書斎で賢三に発見された鏡子が、机に置かれているパソコンに目を留め、「このパソコン、おじさんのオモチャかい?叩き壊してやろうか!」と5番アイアンを振り上げた時、賢三は思わず身を挺してパソコンを庇ってしまう。鏡子はこのパソコンに、事件に関する秘密が隠されていることを察知。当時(1988年)はまだインターネットも一般化していないはずだが、外部からハッキングされるということは、丸元のマシンは当時にしては珍しく常時接続されていたのだろうか?
鬼怒川渓谷の山中で両手に凍傷を負い、病院に入院している冴子(大沢逸美)。医師から、両手指を切断しなければならないと宣告されて、祈子と約束したゴルフの勝負が出来なくなってしまう、と冴子は手術を拒む。しかし、徹(沢向要士)は冴子を根気よく説得し、この先ずっと彼女の力になることを約束します。
鏡子は仲間のミチという娘に指示して、賢三のパソコンへのハッキングを試みる。ミチは「国大(こくだい)の電子工学科でコンピュータを専攻していた」と鏡子に紹介されますが、本作の舞台は横浜なので、国大というのは横浜国立大学のことでしょう。
◆第22話「勝て!少女戦士」
ストーリー
アジトに用意したパソコンを使って、丸元賢三(長門裕之)のパソコンへのハッキングを図る鏡子(土家里織)。やがて画面上に、様々なデータが流れてきた。3年前の事件の状況、祈子(安永亜衣)の交友関係などの他、殺された元プロゴルファー・時田真介(石橋正次)に関することも記録されていた。時田は賢三に百万単位の金を要求していたらしく、3回目の要求をした3日後に彼は殺されていた。時田はおそらく事件の決定的な証拠を握っており、それを餌に賢三を強請っていたに違いない・・・祈子たちがそんな推測を抱いた時、画面が途切れた。賢三がハッキングに気付いて電源を落としたのだ。その直後、アジトを張っていた剣二(萩原流行)と華粋会の男たちが踏み込み、祈子を捕らえようとするが、鏡子たちの助けで、祈子は間一髪、信也(風見慎吾)と共に脱出する。
時田は殺される前、事件の証拠を誰かに託したのではないか・・・翌日から祈子と信也は、時田の親類の家を訪ね歩いた。そこには既に剣二たちの手が回っていたが、まだ証拠が発見された様子はなかった。祈子と信也が、時田の伯父が勤めている倉庫を訪ねた時、待ち構えていた剣二たちの襲撃を受ける。消火器で目くらましをし、その場を逃れる二人だが、埠頭に出た所で剣二と対峙。格闘の中、手負いの剣二に信也が痛烈な一撃を加え、剣二はその場に膝を落とした。祈子は剣二の頭上に鉄パイプを振り上げる。「お前なんか死んじまえ!」・・・だが祈子が振り下ろした鉄パイプは、剣二ではなく、彼の目前のアスファルトを打っていた。「お前なんか、お前なんか・・・!」祈子は涙を浮かべ、何度も何度もアスファルトを打ち続ける。祈子に人は殺せなかった。「あんたは猟犬なんかじゃない、悲しみを一杯ためた人間なんだ・・・!」祈子は剣二に、魂に光を当てて人間としての喜びを知って欲しい、と言い残し、信也と共にその場を後にした。
証拠探しが暗礁に乗り上げた時、ふと信也は、時田のような周到な男が、他人に容易に推測されるような親族の所に証拠を残すだろうかと思い至る。信也と祈子は、時田の別れた妻の家を訪ねた。彼女の所には、時田からゴルフバッグが送られて来ていたという。中身を調べてみると、あるクラブのグリップが妙に浮いており、グリップを引き抜くと、中にはマイクロフィルムの入ったケースが隠されていた。これが証拠品だったのだ。祈子と信也がフィルムを持って警察に向かおうとした時、剣二が立ち塞がった。警察にフィルムを渡せば信也の母・静子(久我美子)の命は無い、と剣二は脅迫する。華粋会の車に捕らわれている静子の姿を見て、祈子はやむなくフィルムを剣二に差し出そうとした。
「待ちたまえ!」と言う声が響いた。そこに姿を見せたのは高倉(国広富之)だった。フィルムを剣二に渡しても静子が戻るかどうか信用は出来ない、と祈子に忠告する高倉。今や高倉は事件に関して全てを告白する覚悟をしていた。そしてその内容を書いた手紙を銀行の貸し金庫に預けてあるという。高倉は剣二と祈子に、ある提案を持ち出した。フィルムは高倉が預かり、高倉は剣二の側に立って、フィルムを賭けて祈子とゴルフで決着を付けるというのだ。フィルムが公になれば、事件に深く関わった高倉のプロ生命も絶たれる。だから高倉も必死で戦わざるを得ない。丸元社長に無断で勝手な真似をするな、と言う剣二に高倉は、丸元社長は自分が説得する、と断言。高倉の勝負を祈子は受けて立った。
明朝、試合の舞台に集結した一行。今回のルールは公式戦と同じ、但し1ラウンド18ホールである。高倉は祈子に、自らハンデを負うこと申し出た。彼はこの試合を、4番ウッド、7番アイアン、パターの3本だけで戦うというのだ。アマチュア女性の祈子が相手である以上、高倉にもプロとしての誇りがあった。祈子のオナーで試合が始まる。しかし、高倉と祈子の実力差は明らかで、4ホールを終えた時点で祈子は3打差を付けられてしまった。この勝負には、事件の証拠だけではなく、祈子のプロゴルファーとしての未来もかかっている。だが今、高倉の圧倒的な力を前にして、祈子は絶望感に捕らわれ、萎縮する心をどうすることも出来なかった。
ミニガイド
神島祈子は今、万感の思いを胸に、鳴り渡る拍手の中、立ち尽くしています。隠された真実を暴き、父の無実を明るみにすることによって、人の心に傷跡を残してしまう。祈子は知りました。人を憎むことよりも、人を愛することの大切さを。そして祈子は今、皆さんと一緒に青春した思い出を秘め、旅立って行きます。最終回「プロゴルファー祈子」、ご期待ください!
MEMO
今回、佐原健二さん(=丸元利一郎役)のクレジットがありますが、本編には登場しません。
冴子(大沢逸美)や、鏡子のアジトで華粋会の襲撃を受けて負傷した順子(白島靖代)たちが入院している病院。野上敬太郎(中条静夫)と静子が車でやって来て、敬太郎は静子を下ろし、敬太郎は警察庁へ向かう。その時、救急車に潜んでいた華粋会の男たちが、静子を車に押し込み連れ去ってしまう。たまたまそれを目撃した徹が救急車に飛び乗り抵抗するが、やがて路上に振り落とされてしまう。画面には、走り去る救急車の横の歩道を平然と歩いている通行人が映っています。
事件の証拠を賭けた、祈子と高倉のゴルフ対決。高倉と対面した祈子は思わず「先生・・・」と呼びかける。鬼怒川でゴルフの特訓を受けた時から、祈子の心の中で高倉は敵味方を超え、純粋にゴルフの先生という存在になったのである。しかし、今回の最終決戦では、あくまで高倉は自分のプロ生命を賭けて祈子の敵として戦う。圧倒的な実力差を祈子は跳ね返せるだろうか・・・。
テイチク 30CH320 1988年発売、3,000円 安永亜衣「亜衣 LOVE YOU」
1.千億のやさしさ
2.セクシーストリート
3.2秒のデジャヴー
4.モノクロームのヒロイン
5.ガラスのラヴァーズ・コンチェルト
6.素敵なTEARS
7.if
8.ごめんね・・・・・
9.神話のPALM TREE
10.硝子のチューリップ
※デビューシングルは「if/モノクロームのヒロイン」(RE-810、1988年2月2日発売)、2ndシングルは「セクシーストリート/風の楽園」(RE-847)。「風の楽園」のみアルバム未収録。
◆第23話「傷だらけの栄光」
ストーリー
事件の証拠フィルムを賭けて、高倉(国広富之)との勝負に挑む祈子(安永亜衣)だが、その実力差は大きく、すでに3打差を付けられていた。第5ホール、第1打をバンカーへ落としてしまった祈子に、高倉が声をかけた。「君は、私が相手では最初から勝ち目はないと心を萎縮させている。君の敵は私じゃない。君自身だ。自分のゴルフを、思い切り良くやることだ」。その言葉を心で繰り返しつつ祈子が放ったバンカーショットは、グリーン上で逆スピンがかかりチップイン。このホール、祈子はバーディ、高倉はパーで、2打差となった。高倉の一言で立ち直った祈子は、熾烈な戦いの中で、高倉はプロテストを受ける自分のために特訓をしてくれているのではないかと妙な錯覚に捕らわれることがあった。
その後、祈子はスコアを1つ落とし、前半のハーフを3打差で終えた。後半、第10~13ホールは両者イーブン、第14ホールは祈子がバーディを決めたが、高倉はボギーを叩き、3打差が1打差に。その後は両者譲らず、最終ホール、祈子は第2打を林の中へ落としてしまった。一方、高倉は3オン1パットのバーディが堅い。祈子が勝つにはイーグルしかないが、ボールは林から出すだけで精一杯の位置だ。絶望が頭をよぎった時、ふと祈子は、鬼怒川峡谷での特訓を思い出した。木を利用したあの曲打ちだ。持てる力の全てを集中した祈子のショットは2本の木に跳ね返ると、驚くべきことに直接カップへ吸い込まれた。そして、高倉のバーディパット。これが決まれば再びイーブンとなる。だが、高倉のパットは僅かにカップの脇に逸れて止まり、この瞬間、祈子の勝利が決まった。「私の負けだ。見事だったよ」と祈子を称える高倉。「先生・・・」祈子は高倉を仰ぐように応えた。
高倉は約束どおり、フィルムと写真を祈子に差し出した。そこには、丸元賢三(長門裕之)が義兄の丸元利一郎(佐原健二)をクラブで殴り殺す決定的瞬間が写っていた。その時、銃声が響き、猟銃を手にした賢三が祈子たちの前に姿を見せ、写真とフィルムを渡すよう迫った。彼らの前に、鏡子(土家里織)、亜矢子(生田智子)と律子(岩本多代)もやって来た。渡さなければ撃つ、と賢三は祈子たちに銃口を向け、引き金に指をかける。だが、銃が火を噴いた瞬間、野沢剣二(萩原流行)が祈子たちの盾となって銃弾をその胸に受け、倒れた。剣二の思いがけない行動に賢三は狼狽するが、やがて剣二が息絶えると、賢三は観念して銃を下ろした。
「・・・全ては終わったよ。義兄を殺したのは確かに私だ。その罪を友平になすり付けて、自殺に見せかけて殺したのもこの私だ。私はこの3年間、真相が明らかになることを恐れて、ただただ怯えて生きてきたような気がするよ・・・」。そして賢三は祈子を振り返った。「妻と娘はこの事件には全く関係ない!」。そう言い残すと、賢三は自らの咽喉を撃ち、命を絶った。直後、亜矢子が賢三に駆け寄り、銃を取って自分に銃口を向けた。「・・・死なせて!死んでお詫びをするしかないわ!」取り乱し泣き喚く亜矢子を祈子と鏡子が必死に制止した。賢三の亡骸にすがりつき号泣する亜矢子と律子。やがて律子が顔を上げ、祈子に許しを請うた。「祈子さん、今までのことは・・・」。だが、今や祈子に恨みの感情は無かった。「おばさま、いいんです。これからは亜矢子さんと二人で、決してくじけず・・・」
祈子は写真とフィルムを世間に公表せず焼き捨てることを決意した。父の無実は今、祈子の心の中ではっきりと証明されたのだ。祈子は信也(風見慎吾)に言った。「お母さんも徹兄ちゃんも、分かってくれると思う。・・・丸元賢三が自殺した以上、全ては終わったのよ。私はもうこれ以上、高倉さんや亜矢子さんを苦しめたくはないの。・・・苦しむのは私たち一家だけで沢山だわ。それに私、殺人者の娘の汚名を着たままでも、必ず世界に通用するプロになってみせる。私は負けないわ!」。祈子は写真とフィルムにライターで火を放った。
それから5日後、プロテストの日がやって来た。ちょうどその日、高倉は警視庁に出頭し、虚心坦懐に全てを告白し、そして妻の墓前で潔くプロゴルファーを廃業した。高倉はその夢を祈子に託したのだ。その祈子は今、青春の全てを賭けてプロテストに集中していた。一打ごとに思い出が甦り、祈子は胸を熱くしながら、プレーに情熱を注ぐ。テスト最終日、グリーン上の祈子が呟いた。「高倉さん、祈子は今、最終ホールのグリーンの上に立っています。最後のパット、あなたに捧げます」。祈子は8アンダーという驚異的な数字で全ホールを終えた。
プロテストの合格発表の日。祈子は第1位で合格した。周囲の人々から祝福される祈子は、最後に万感の思いを込めて信也に言った。「あなたが支えてくれたからです。あなたがいなかったら私は・・・」。信也は首を振る。「君のお父さんの祈りが通じたんだよ」。その日、祈子は信也と一緒に、初めて父の墓参りに向かった。信也さんと再会して私は変わった、人を信じることの大切さ、自分が一番みじめなときにこそ他人を思いやる心を持つことを教えられた・・・そして遂にプロテストに合格できたことを、祈子は父に報告した。
墓参りの後、波打ち際を歩く祈子と信也。ふと立ち止まった信也が、口を開いた。「・・・祈ちゃん、これから僕が話すことをよく聞いてくれ」。祈子は笑顔で頷いた。
信也「僕はここで君と別れる」
「信也さん・・・!」思いもよらない言葉に、祈子の顔が曇った。
信也「祈ちゃん、君はお父さんの真実を明らかにするために本当によく戦った。何度も無茶なことをして僕をハラハラさせたけど、君は死線をくぐり抜け、絶望を乗り越える度に心と魂を強くして、輝くような女性となった。でも君には、お父さんの夢があるんだ。全日本女子オープンに優勝するという大きな夢があるんだ。これからは君一人でやって行くんだ。一人で悩み、一人で戦って行くんだ」
祈子「やめてください信也さん。あなたが支えてくれたからこそ、私は今日まで生きて来れたんです。あなた無しでどうやって生きて行けるって言うの?・・・信也さん、私はあなたを愛してるんです。愛してるんです!」
信也「僕も君のことを愛してるよ。祈ちゃん、僕の君に対する愛は一生変わらない。だから別れる決意をしたんだ。君が一人で生きて行く人間になるために、別れる決意をしたんだ」
祈子「嫌・・・嫌です!信也さんと別れるくらいなら、私、プロゴルファーになんてならなくてもいい。信也さん、私を傍に置いてください。あなたは私のために全てを捨ててくれたわ。今度は私がそうする番です」
信也「祈ちゃん、君は今日までの戦いの中で、人間の憎しみ、悲しみ、怒り、喜び、嘲り、裏切り、その全てを知ったはずだ。その中で、どんな人でも光を求め、魂を輝かせて生きることを望んでいることを知ったはずだ。これからの人生で君がやらなければならないことは、君のゴルフで、そんな人たちに勇気を与えることだ。プレー中の君の姿を見ることで、多くの人が活力を取り戻し、明日を生きる勇気を持つことが出来るような、そんなプロゴルファーに、君になって欲しい」
祈子「信也さん・・・」
信也「正直言って、僕も自分の人生を考える時間が欲しい。いつか、いつか君を大きく迎えるために、僕も人間として成長しておきたいからね。・・・僕の仕事は終わった。これからは僕自身が、祈ちゃん、君の高さまで自分を引き上げる番だ。分かってくれるね」
祈子もやがて涙を浮かべながら頷いた。
信也「君は光のような女性だ。自ら輝き、君を見る全ての人を輝かせることの出来る女性だ。いつでも、どんな時でも、魂を光に掲げて生きてくれ!」
祈子「信也さんの心を決して、決して忘れません・・・!」
信也「僕たちの別れに涙はよそうな。僕はいつでも君を見てるぞ。さよなら、祈りっ子・・・!」
祈子「さよなら・・・」
信也は祈子を残して、一人歩き始めた。去り行く信也の姿を見つめながら、祈子は悲しみを堪えながら信也に誓った。
祈子「泣かないわ信也さん。いつか、いつか光の中であなたと逢うまでは、私は泣かない。泣かないわ・・・!」
別れの言葉に信也の大いなる愛を感じた祈子は、溢れる涙の中で、プロゴルファーとしての新たなる出発を決意していた。
――祈子、18歳。青春の旅立ちである。
MEMO
「祈ちゃん、これから僕が話すことをよく聞いてくれ」という信也の言葉を聞いて、てっきり信也からプロポーズされるとでも思ったのか、祈子は笑顔で頷くが、信也の口からは思いがけない告白が飛び出す。信也と祈子は人生の同志として数々の苦難を乗り越え、遂に祈子の父・友平の無実という真実を掴んだ。そして祈子は父の夢の第一歩であるプロテストに合格する。しかし、真実を追い求めた二人の努力の陰では、多くの人々の犠牲がありました。命を落としてしまった者たちはもとより、深い心の傷を負うことになった律子と亜矢子など・・・。終盤で信也が語る言葉は色々な解釈がありそうですが、一連の海岸でのシーンは、何度でも繰り返し味わいたい名場面だと思います。
祈子たちを庇って、自ら賢三の凶弾をその胸に受けてしまう剣二。息を引き取る間際、剣二は、自分の抱いていた夢について語る。高校を卒業したら真っ当な会社に入って、家族を持ちたいと思った、ちっぽけな夢だが、俺には十分すぎる夢だった、と。だが剣二は高校卒業後は賢三によって有無を言わさず暴力団に入れられ、その夢が叶うことはなかった。「野沢、どうして・・・!」と問いかける祈子に剣二は、「俺にも分からねえ・・・祈子、それは多分、お前が俺の魂に、光・・・」そう言いかけて、剣二は息を引き取ります。賢三の忠実な猟犬として生きねばならない宿命を背負った剣二。最後にようやく希望の光に触れたところで、図らずも妹・冬子の後を追うことになってしまいます。
賢三の亡骸にすがりついて泣き崩れる亜矢子と律子に、鏡子が寄り添い声をかける。
「もういいじゃないか。私もあんたたちがおじさんの仲間じゃないことが分かってホッとしたんだ。今まですまなかったね。これからは、残された私たちで丸元の家を再興させ、守っていこうじゃないか・・・」
・・・あまり二人のフォローになっていないような気がしますが・・・。おまけに鏡子は、祈子がプロテストを終えた日、こんなことを言っています。
「祈子おめでとう。私はアメリカに留学して一から勉強をやり直してくるよ。祈子、アメリカで試合する日を楽しみにしてるよ。チャオ、祈子」
「チャオ♪」と鏡子は従姉である亜矢子さんを置いて旅立ってしまいます。